衆院予算委員会で4日に行われた基本的質疑では、階猛議員が(1)自民党の憲法改正草案に対する安倍総理の認識(2)軽減税率(3)特例公債と復興債に関する政府提出法案――などについて質問した。
自民党憲法改正草案について
前日の衆院予算委員会で安倍総理が稲田自民党政調会長の質問に応じる形で自民党の憲法改正草案に触れ、「7割の憲法学者が自衛隊に憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべき、という考え方もあって憲法9条2項を改正し、自衛権や自衛のための組織を明記した」と述べている。そこで階議員は、「9条2項の改正案は、自衛隊の合憲性を明らかにするというよりも、集団的自衛権を全面的に行使することが目的ではないか」とただした。これに対し安倍総理は「私は内閣総理大臣としてここに立っている。この場で(自民党草案の)個々の条項について解説する立場にない」と答弁を避けた。階議員は、自党の議員には冗舌に語りながら、野党の質問には答えない安倍総理を「ご都合主義だ」と批判した。
自民党憲法改正草案の「緊急事態条項」について
安倍総理や自民党議員らが改憲の必要性を強調する「緊急事態条項」。自民党憲法改正草案には「第9章 緊急事態」として、他国からの武力攻撃や大規模災害などが発生した際、内閣総理大臣に権限を集中することや、国民の基本的人権の制限などを盛り込んでいる。これについて自民党の片山さつき議員などは、福島第1原発事故の際に住民を20キロ圏外に避難させることが憲法に制約されることなどを例に挙げ、緊急事態条項の必要性を主張している。
これに対し階議員は「これは緊急事態条項の問題ではない」と断じ、その理由として2006年には国際原子力機関(IAEA)から原子力事故の際の避難区域を10キロ圏内から30キロ圏内に広げるように指導があったにもかかわらず、「当時の第1次安倍政権は『社会的混乱を引き起こす』『財政負担が増える』という理由で避難区域の拡大を見送った」と指摘し、この指導に従って体制を整えておくべきだった主張した。その上で安倍総理に「当時のこうした判断は、今から見ると誤りだったのでは」とただしたが、安倍総理は「間違った判断はしていない」と開き直った。階議員は「過去の例を教訓として、緊急事態条項を軽々に論じるよりも、まずは事前の必要な体制整備・訓練をしっかりやるべきだ」と強調した。
自民党内にもある軽減税率への懸念
軽減税率については、昨年5月に、与党税制協議会内の「消費税軽減税率制度検討委員会」に当時の野田毅会長が提出した「軽減税率の課題」と題する資料を示し(資料1)、ここで示されている「対象品目の悪循環」に陥るリスクはないのかとただした。麻生財務大臣は「対象品目は慎重に議論した結果だ」と投げやりに答弁し、安倍総理は「1兆円の範囲をこえることはない」と強弁した。階議員は「自民党の重鎮でさえも懸念していることを肝に銘じるべきだ」と力を込めた。
特例公債と復興債のセット法案
今国会には、特例公債と復興債の発行に関する改正案※が提出されている(資料2)。この両者は、それぞれ別の法律で規定されているにもかかわらず、政府はこの2本を一体のものとして提出するという、昨年の安保法制にも見られた姑息な手法を取っている。階議員は「なぜセットにするのか。使途、借金の規模、返済原資、まったく違う」「今回のセット法案は、きれいな羊羹の横に怪しげなお金が入った封筒が添えてあるようなもの」と指摘。「まったく意味の違うものをセットにするのは、被災地に対しても国民に対しても失礼だ」として提出法案を分離するよう求めた。麻生財務大臣は「復興財源の確保と一般財源の確保は密接に関連する」などとして応じず、階議員は「野党が法案に反対できないようにするための卑劣なやり方だ」と批判した。
※東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案