衆院予算委員会で16日、2016年度補正予算の審議が行われ、民進党の3番手として質問に立った山尾志桜里政務調査会長は(1)熊本地震(2)保育士の処遇改善策――について取り上げた。
熊本地震への対応については、自身の12日の現地視察も踏まえて特に被災者生活再建支援法の対象要件と金額の拡大を要望。現状では、液状化の被害等が起きても家屋は取り壊しせずに補修となると支援金の対象から外れる一方、解体やむなしと対象になっても上限300万円では厳しいことから、民進党として13日、住宅再建の支援金を最大300万円から500万円に、検討事項として解体等の条件をつけずに半壊家屋も支援の対象とする同改正案を野党4党で衆院に提出したことにも言及し、「これは4月28日に稲田政調会長宛に申し入れた補正予算の提言書にも入れていたものでもあり大変残念。政府はやらないということだが、私どもはあきらめずにしっかりと立法府として全力で被災地を支えていきたい」などと述べた。
保育士の処遇改善策をめぐっては、民進党が待機児童の解消に向け3月24日に衆院に提出した、保育等従業者の給与を平均して1人当たり月額5万円引き上げる法案が1カ月半もの間たなざらしにされていると指摘。この問題に後ろ向きな政府・与党の姿勢をあらためて問題視するとともに、4月26日の「1億総活躍国民会議」での安倍総理の「保育士の改善については、新たに2%相当の処遇改善を行う」との発言を取り上げ、「この新たな2%というのは、民主党政権時の2012年に社会保障と税の一体改革の計画でやりましょうと言って決めた2%のことであって、『新たに』とは言わない」と断じた。
2%相当の処遇改善に加え、塩崎厚生労働大臣が「保育士としての技能・経験を積んだ職員について全産業の女性労働者との賃金差が月額4万円程度あることも踏まえて、賃金格差がなくなるようさらなる処遇改善を行っていく」と発言したことから、「保育士の給料が全産業の平均より11万円も低く問題だという論点を話しているときに、女性の平均をものさしに出されたのは大変問題」だと指摘。安倍総理も「全産業の男女と比べるのが一番いいわけだが、そもそも保育士の男女差は全産業での男女差よりもだいぶ少ない。一気にそれをなくすのは難しいわけだからまずはそこまでいくということ」などと塩崎厚労大臣の発言を追認したため、山尾議員は「保育は女性の仕事なのか。男女の賃金格差があるという大きな社会問題を認めるのか。女性労働者の賃金をものさしに使うということはこの2点を前提にするということ。そもそも保育や介護の賃金が全産業に比べてとても安いのは、保育や介護の仕事が女性が家でやる仕事、あるいはその仕事が社会化されても女性が担う仕事だという歴史的なさまざまな背景や価値観があるからだ。このままでは女性活躍政権どころか男尊女卑政権だと言われる」などと厳しく批判した。
山尾議員は「保育士の給与が低過ぎて不足しているため、(子どもを預けられないことが)女性が社会にはばたけないハードルになっていたり、子どもに居場所がなく育ちの場所がなかなか与えられない。この両方をきちんと解消しなければこの国の未来は築けないということが問題なのだ」とも指摘、総理と厚労大臣の答弁に抗議の意を表明した。