参院TPP特別委員会で1日午後、「TPPと貿易ルール、紛争解決、将来における経済連携の在り方等」に関する集中審議が行われ、民進党・新緑風会から政務調査会長代理の藤末健三議員が質疑に立ち、(1)鳥インフルエンザ対策(2)TPPと農業(3)TPPとEPA(経済連携協定)の今後の展開(3)経済連携協定の全体戦略の転換(4)自由貿易協定(FTA)推進体制の強化――等について政府の見解をただした。

 青森、新潟両県で発生した高病原性鳥インフルエンザ問題については、今後の対策を考えるうえで感染ルートの特定と、感染拡大が進む韓国から直行便が入っている地方空港での対策を徹底するよう要請。「鳥インフルエンザの対応は、いかに早く見つけ感染の拡大を止めるかだ。市場に流通している鶏肉やたまごの安全性やペットへの感染を不安視する声もある。与野党関係なく一緒に取り組んでいきたい」と力を込めた。

TPPをめぐる今後のシナリオ

 TPPをめぐっては、米国のトランプ次期大統領が11月21日、来年1月20日の就任初日に離脱すると表明したことを受け、「今のTPPをこのまま通して成立させるのは難しいと思う」と指摘。自身が想定する「TPPをめぐる今後のシナリオ」を提示し、わが国がどの方向に進むのか明確にしてほしいと求めたが、安倍総理は「米国での今後の見通しは、厳しいのは事実。粘り強く意義、価値について米国側に働きかけていきたい」と答えるにとどまった。

RCEPとTPP

 藤末議員は、米国とのFTAをTPPと同時に議論するべきだと主張。東アジア地域包括的経済協定(RCEP)についても、対象国のうち日本を含む7カ国がTPPと重複しているとして、「RCEPでは、GDPで約3割、人口で約5割、成長力が高い地域が入っている。わが国の経済を伸ばすことを考えればRCEPを進めるという選択肢があるのではないか」との考えを示すと、安倍総理は「RCEP交渉で、TPP交渉での成果も踏まえながら質の高い協定の早期妥結に向けて積極的に交渉を続けていきたい」と応じた。

日韓のEPA,FTAのカバー率

 日本と韓国ではEPA、FTAのカバー率で大きな差が生じているとも指摘。米国に対して日本は自動車に関しては2.5%の関税をかけているのに対し、韓国では2016年から関税がゼロになっていることを一例に挙げ、「日本の自動車メーカーが2.5%の不利を被っているなかで、他国との競争を考えたときにあらゆる手段を使ってやるべきだ」と述べた。韓国ではEPA、FTAを進めるに当たって2003年にロードマップをつくっていたことから、日本でもロードマップを示すべきだと求めた。

パネルを示し質問する藤末議員

パネルを示し質問する藤末議員

 加えて、日本でTPPへの理解が深まっていない大きな要因として手続きの問題を挙げ、民進党はTPP交渉など国民生活に重大な影響を及ぼす通商交渉に関し、政府に情報提供を義務付ける法案を提出していることに触れ。情報を周知し国民の理解が深まることがEPA、FTAを進めることに資すると説いた。

 今回のTPP協定については、「守るべきものを守っていない。支えるだけのことをしていない」「取るべきものをとっていない」「情報の開示に問題がある」とあらためて指摘し、「TPPに縛られず、広いオプションを持ってやってほしい」と求めた。