1日午後に開かれた参院TPP特別委員会の集中質疑で、民進党の2番手として大野元裕議員が質問に立った。

 大野議員は、「国民は政府のTPPについての説明に不信感を抱いている。断固反対と言って選挙を行った政党の総裁が、その後は豹変(ひょうへん)してわが国の使命だととも言いだした。次期米国大統領のトランプ氏と会談した安倍総理がTPP推進を標榜(ひょうぼう)した4日後に、そのトランプ氏はTPPから脱退すると宣言している。国民は何のためにTPPの審議をしているのか、多くの疑問を抱いている」と指摘した。これに対して安倍総理は、「自民党としてこのようなポスターを作ったことはなく、一部の選挙区のものだ。自民党の公約にも入っていない。私自身も断固反対と言ったことはない」などと言い訳に終始。大野議員は、「このポスターの政党名は『自民党』と読む。多くの有権者はこのポスターを見て投票した。質問には真摯(しんし)に答弁することが国民に理解される唯一の手段だ」と述べた。

大野議員がパネルで示しながら質問

 「トランプ氏の考えを聞いたうえでTPPの議論をしている政治家がいる。それは安倍総理だ。会談の中身が明らかになっていないのでわれわれは分からないが、安倍総理はトランプ氏の考えを聞いた上で、米国が入らなければ意味のないTPPの審議をしろという。多くの資源と税金が費やされる中で審議を行い、もし米国が不参加の場合は、総理の見通しが甘いということになるが、その責任を感じているか」と問いただす大野議員に、安倍総理は、「ルールを作った意義を世界に発信していく役割りを担っている」「行政・外交に関わる全ての責任は私にある」などと答えるのみ。

 大野議員は、TPPを進めているなら日米2国間FTAは必要ないはずだと述べた上で、「自由貿易を進めるべきだが、国民に方向性についてきちんと話すことは必要だ。このままではTPPは9日に自動成立してしまう。今後の議論の手順について説明をして欲しい」と求めた。安倍総理は、「日米FTAを考えるということではない。TPPを1日も早く成立させてほしいという思いだ。その上で米国に対してTPPの意義を理解してもらうよう全力を上げる」と述べた。大野議員は、「政府から依頼があってわれわれはこの法案を審議している。トランプ氏が何と発言しようと私たちは審議してきた。しかし行政府の責任として、ここはいったん止まって廃案とし、信頼が置けるとされたトランプ氏なのだから、行政府で整理してから再度立法府で議論するということが筋だと考える」と指摘した。

 大野議員はまた、岸田外相が訪ロすることを取り上げ、「日ロの重要会談と理解するが、その時に、わが国固有の領土である北方領土に新たに配備されたロシアの地対艦ミサイルについて、抗議と撤去を求めるか」と質問した。岸田大臣は、「遺憾である旨申し入れはした。今回の訪ロはプーチン大統領訪日の準備の一環としてだが、会議でどういう議題を取り上げるかは控えたい」と答えた。大野議員は、「このミサイルは迎撃が難しく、のど元にナイフを突き付けられたようなものだ。1979年にソ連が最初に軍を展開した時には撤収を求めている」と述べ、今回もロシアに対し撤収を求めるよう指摘した。

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