衆院予算委員会で1日、2017年度政府予算3案に関する基本的質疑が行われ、民進党の4番手として質問に立った辻元清美議員は、教育の無償化や外交・安全保障について安倍総理らの見解をただした。
外交・安全保障では特に、北方領土での共同経済活動などで合意した昨年12月の日ロ首脳会談をめぐり、(1)安倍総理はプーチン大統領とこれまで16回の会談をした(2)(首脳会談直前の)土壇場で地対艦ミサイルを国後島と択捉島に配備された(3)ロシア側には択捉島、国後島、色丹島、歯舞諸島の4島の名前を明記していない別の声明がある(4)4島の名前を明記した両首脳が署名した文書の合意は結べなかった(5)一方、経済関係などの覚書12本を結んだ(うち約半分は非公開)――との事実を踏まえ、「ミサイル配備は明らかな現状変更であり、ミサイルを撤去してから今後の経済交渉などを進めていくべきではないか」「今回の『プレス向け声明』は、首脳両者のサインがなく、政府当局間の合意文書ではない、外交文書のレベルとしてはるかに弱いもの」などと指摘。「今まで歴代の先輩方は、ロシアの呼称を使わせないことに努力してきたが、安倍総理になってから4島の名前が消えている。これが領土問題の核心だ。これだけの大型の経済活動だ。両者がサインできる、4島の名前がきちんと明記された共同宣言や共同声明をもう一度交渉すべきではないか」と迫った。
これに対し安倍総理は「今まではともすれば歴史的な経緯、国際法的な立場についての議論に終始していた。このような議論を続けていたのでは領土が返ってくるはずがない。だから今回新しいアプローチをとった」などと強弁した。
ロシア側が返還後の日本領土に日米安全保障条約の適用地域から除外するよう求めていることに関連して、辻元議員は「日米安保条約と北方領土の問題をリンクさせた根回し、道筋がない限り難しいのではないか。この回答が見つかっていない時に最大限の経済支援カードを切ってしまった。次にどんなカードを出すのか。経済交流をしていけば解決するような問題ではない」と指摘し、「総理は過信外交になっている。私がやればなんとかなる、個人的な信頼を作ればなんとかなると言って、トランプ大統領との時も会談の3日後にTPPをひっくり返された」と苦言を呈した。
辻元議員はまた、米国のトランプ大統領がイスラム圏7カ国からの入国を禁止する大統領令を執行したことに対し、各国首脳が異議、批判をしているなか安倍総理が「コメントする立場にない」と論評を避けていることを問題視。「国民の命を守ろうと思うなら、日本にテロを誘発したくないと思うならコメントを出した方がいい。『日本は多様性と共生を、私は寛容と和解を大事にしている。トランプさんもそうではないのか』と言ってはどうか」と提案した。