衆院本会議で27日、政府提出の2017年度政府予算3案と歳入関連の「地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律案」「地方交付税法等の一部を改正する法律案」「所得税法等の一部を改正する等の法律案」の採決が行われ、与党などの賛成多数で可決した。採決に先立ち、民進党の井坂信彦議員、逢坂誠二議員、木内孝胤議員がそれぞれ反対討論を行った。
■2017年度政府予算3案
反対討論に立った井坂議員はまず、「この本会議で予算の採決が強行されることに強く抗議する」と表明。「この度の予算審議では予算及び安倍政権の政策だけでなく政権運営の在り方についてもさまざまな問題点が噴出した」と述べ、(1)天下り(2)共謀罪(3)南スーダンPKO(4)森友学園への国有地売却――等の問題があると指摘し、この状況で予算委員会の審議を打ち切り、事件を幕引きしようとする政府・与党のやり方は国民を愚弄(ぐろう)するものだと断じた。
そのうえで、2017年度一般会計予算について「総額は過去最大規模になっている」と問題視し、「財源は名目2.5%、実質1.5%と極めて甘い経済成長見通しに基づく税収。2016年度予算についても経済成長率の見通しを甘く設定し税収を過大に見積もった結果、1.7兆円も税収を下方修正せざるを得なくなり、リーマンショック以来7年ぶりの赤字国債追加発行を招いた反省はないのか」「その甘い見通しに基づいた経済財政の中長期試算ですら2020年度の基礎的財政収支赤字は3兆円近くも悪化し、財源健全化はさらに遠のいた」との見方を示した。
井坂議員は「民進党は『人への投資』を経済政策の柱に置き、国民一人ひとりの能力を最大限伸ばし、それを発揮できる環境を整えるため、不要不急の事業や必要性が疑われる事業が散見される政府提出予算を適正化し、『人への投資』や『地域活性化』に最大限重点配分を行う組み替え動議案を提出した」「さらに、配偶者控除等の見直し、金融所得課税の引き上げなどの所得税の抜本改革、消費税引き上げの税率1%分などを財源に教育の無償化など『人への投資』を大胆に進め、「日本型ベーシックインカム構想」で中間層を復活させる法案も提出している」と述べ、これらの対案を真剣に検討するよう政府・与党に求めた。
衆院本会議2017年度政府予算3案反対討論原稿(予定稿)井坂信彦議員
■「地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律案」「地方交付税法等の一部を改正する法律案」
反対討論に立った逢坂議員はまず、地方交付税法等改正案について、今年度予算が当初の甘い経済見通しがあだとなり、税収見積もりが大きく下回った結果、国税5税の法定率分収入の下振れを、地方が臨時財政対策債、いわゆる赤字地方債で負担した問題を指摘し、「来年度も甘い見通しに基づく税収見積もりで、地方交付税額が予算通り確保できるのか、極めて不透明なままであり、今年度の苦い轍を繰り返しかねない」等と反対理由を述べた。
地方税法等改正案については、配偶者特別控除で配偶者の所得制限を155万円に引き上げることで、いわゆる「103万円の壁」を乗り越えるとしているが、「これは、150万円という新たな壁を作ったにすぎず、『働き方に中立』、あるいは『所得控除から税額控除』という方向性に全く逆行するもの」だと指摘。その理由について「控除が受けられる上限を増やしただけでは、社会保険料負担が発生し、手取りが減るという『130万円の壁』が依然として残り、就労拡大の根本的な解決にはつながらない」と説明し、今回の改正案に反対の姿勢を示した。
それに対して民進党は、格差を縮小し、社会のつながりを回復させるとともに、経済成長実現の観点から、「所得控除」から「税額控除」へ、「税額控除」から「給付付き税額控除」への流れを推し進める法案を国会に提出したことを紹介。「これは、所得税から引ききれない税額について、現金給付ではなく社会保険料の支払いに充てることによって、無年金者や生活保護世帯を減らし、社会保障制度再編の起爆剤としていく『日本型ベーシックインカム構想』の実現へとつなげ、未来への責任を担う税のあり方だ」と提案した。
衆院本会議地方税交付税法改正案反対討論(予定稿)逢坂誠二議員
■所得税法等の一部を改正する等の法律案
反対討論に立った木内議員は、現下の経済状況について「円安を背景に株価や企業収益は好調な一方で、 2014 年4月の消費税増税以降、個人消費の低迷が続き家計は痛み、中間層は疲弊している。家計消費支出は3年連続マイナス、実質賃金は安倍政権になってから5ポイント程度も下がっている。先週の月例経済報告でも個人消費を下方修正したばかり」「安倍総理は『全国津々浦々で確実に経済の好循環が生まれている』などと自己満足に浸っているが、実質GDPも4年間の平均で1.3%、1.6%成長だった前政権時を下回っている」とも指摘した。そうした実態を踏まえて木内議員は「経済を底上げし成長軌道に乗せるためには、低迷している潜在成長率を引き上げるような規制改革、構造改革が重要な課題」だと問題提起した。
そうした認識に立って木内議員は「世界的に所得の再分配機能が低下し、格差が拡大の是正と中間層の復活が課題であり日本も同様」だとの見方を示し、「民進党は、格差拡大や社会の分断化を食い止め、誰も置き去りにしない、全ての人に居場所と出番があって、全ての人を包摂する自由で公正な社会の実現を目指している。そのために実質的に全ての人への基礎的な所得保障につながる所得税改革を行うべきと考え、法案もすでに提出している。これにより、無年金者、生活保護世帯を減らし、社会保障制度再編の起爆剤にする。これが民進党の『日本版ベーシックインカム構想』だ」と語った。そして「家計が痛み疲弊する中間層に目を背けたアベノミクスは、時代に合わせた大きな絵が描けていない。政府与党に代わって、民進党こそが「日本版ベーシックインカム構想」を軸に据えた税制の抜本改革を実現することを約束する」とも表明した。
木内議員はまた、「本法案には静かにそして姑息に『電磁的記録の証拠収集手続の整備』が盛り込まれている。これは、いわゆる『サイバー監視法案』の内容を国税犯則調査に取り込もうとするもの。共謀罪の立証のために国税犯則調査で収集した証拠が利用されうる。『通信の秘密』やプライバシー権など憲法上の基本的人権が脅かされ、『1億総監視社会』を招きかねない」と問題視し、削除を求めた。