衆院法務委員会委員の逢坂誠二、井出庸生、山尾志桜里各議員は8日午後、同日午前の同委員会でのいわゆる「共謀罪」法案(組織犯罪処罰法改正案)に関する質疑を受け国会内で記者会見を開いた。同法案をめぐっては、政府はテロ対策を強調し、呼称として「テロ等準備罪」を使いながら、与党に示された政府案の条文にテロリズムの定義も文字もなかったと報道されている。
同委員会筆頭理事の逢坂議員は、「本来目指している法案の中身と、国民に振りまいているイメージとが大きくかい離をしているのではないかという問題意識を持っている」「この法案がなければ東京オリンピックを開催できないかのような物言いをしているのは誤った印象操作ではないか」などと指摘。政府は一方的に都合のいい説明はするものの、野党の質問には「成案ができていない」ことを理由に答弁を避けており、「フェアな状況ではない」と政府の対応を批判した。
山尾議員は、自身の「与党に示した法案は公文書か」との質問に金田法務大臣は7日、「公文書ではない」と明言したが、再度確認すると「検討する」となり、同日の枝野幸男議員の質疑では「公文書だ」と答弁を180度転換したと報告。金田法務大臣は公文書であると認めながらも、最初に与党に提示した法案に「テロ」という文言があったかどうかについては「知っているが言いたくない」と明確な理由は示されていないと批判した。報道にあるように、当初与党に示された案には「テロ」という文言がなく、今後閣議決定されるものに加わることがあれば、「テロ対策というお題目は何だったのか」というのが国民の素朴な疑問だと指摘。大臣が隠し続けることに「現段階での客観的事実であり成案前だという弁解は通じない」と述べ、合理的な理由を追及していくと力を込めた。
山尾議員は、今回の法案について金田大臣が、「予備行為の場合は客観的に相当な危険が必要なので予備では足りない」「客観的に相当な危険は必ずしも必要とされない」と答弁したことに、「処罰法規の原則を根底から覆すような、びっくりするような答弁だ。客観的に相当な危険がないのに人を逮捕し、刑務所に入れるということだ」と指摘し、これについても引き続きのでしっかり追及していかなければいけないと述べた。
同委員会理事の井出議員は、「昨日、今日の質疑でそもそも質問に答えることができない」とあらためて法務大臣の資質を問題視。「引き続き辞職を求めていく考えは変わらない」とした。また一部報道で「共謀罪の構成要件を厳しくする」との説明がされていることに言及。「政府の答弁では『検討中』であり、今の時点では分からないということだ。成案が出てきた時点で本当に構成要件が厳しいかをただしていくので、もう少し慎重にやっていただきたい」と報道各社にも注文をつけた。
自民党の法務部会で「条文の処罰の対象に『テロリズム集団』という文言を加えたうえで了承した」ということへの所感を問われ、逢坂議員は、「報道で知る限りだが」と前置きしたうえで、「言葉を付け加えたからといって法律の構成が抜本的に変わっているものではないと思う。単にテロという言葉をつけて法案の中身を粉飾するような法案を了承したのではないかという印象」とコメントした。
山尾議員は、テロ対策の必要性は民進党としても強く主張し、協力する考えだとしたうえで、今回の法案は「そもそもテロ対策は詭弁だということ」だと断じ、同法案の問題点として(1)(政府が締結のためには「テロ等準備罪」の新設が必要だとする)TOC条約はお金儲けのための組織犯罪を処罰することが目的でありテロ対策はそもそもの目的ではまったくない(2)今回の審議で共謀罪を必要とするテロ対策としての立法事実は今のところ1つもない(3)最初に与党に示した法案には「テロ」という文言が1つもない――の3点をあらためて挙げた。