民進党の衆参両院の法務委員会所属議員は21日昼、いわゆる「共謀罪」法案(組織犯罪処罰法改正案)が閣議決定されたのを受け、国会内で記者会見を開いた。衆院側は逢坂誠二筆頭理事、井出庸生理事、階猛、山尾志桜里両議員が、参院側は真山勇一筆頭理事、有田芳生議員(ネクスト法務大臣)が記者会見に臨んだ。

 冒頭で有田ネクスト大臣は「私たちが『天下の悪法』として追及してきた共謀罪の法案が閣議決定され、新しい局面に入った」と述べ、今後の対応に関して報告する考えを語った。

 逢坂議員は、今国会での提出法案について「テロ等準備罪、今までの共謀罪とはまったく違うもので一般の方は処罰の対象にならない」とする1月の菅官房長官の記者会見発言を受け、これまでの質疑で見えてきた問題点を、下記の通り列挙した。

  • 菅官房長をはじめ政府の説明では「一般の人は処罰の対象にならない」とのことだが、審議ではこの点の根拠がまったく明らかになっていない。
  • これまでの共謀罪の法案とまったく違うという説明を政府は繰り返すが、閣議決定後の21日の質疑でも「今日の段階では答えられない」との答弁が金田法務大臣から示された。
  • 今回のいわゆる「共謀罪」が必要な理由、立法事実について政府は(1)ハイジャック(2)コンピュータウィルス(3)薬物――等の事案への対応が従来の法整備では不充分なためと説明することがあったが、それらは結局、立法事実とはなりえないことが質疑から明らかになった。しかも、閣議決定以後の本日段階でも、新たな立法事実があるかについて金田法務大臣は「今日の段階では答えられない」旨を答弁した。
  • 立法事実として政府は東京オリンピック開催に向けてTOC条約締結のためにいわゆる共謀罪が必要だと説明するが、TOC条約が求めるものは必ずしもテロ対策ではない。また、日本では重大な犯罪を中心に、未遂、予備(準備)、共謀(陰謀)を処罰する罪を定め、判例によって共謀共同正犯の処罰も認められているため、TOC条約の担保法に関する立法ガイドに照らせば、条約の趣旨は十分に満たしていると考えられるので、現行の刑事法体系をもって、TOC条約締結の手続きを進めるべき。

 逢坂議員は「単に東京オリンピックに必要であるかのような発言をして、イメージ戦略をしていることについて、われわれはこれまで厳しく言ってきたが、これからも厳しく追及していく」と語った。

 階議員は、法案ができていないことを理由に答弁を避けてきた金田大臣に対し、法案閣議決定を受け「一般市民が対象になるか」に関して「組織的犯罪集団」に該当するかどうかの判断基準を質問したと説明。これまでの質疑では「テロ組織、暴力団、薬物密売組織に限られる」とする答弁もあったが、本日の質疑を通じてはその答弁は例示にすぎなかったことが明らかになり、「組織的犯罪集団」の判定基準があいまいである点を階議員はあらためて問題視した。

 また、「組織的犯罪集団に一般組織も該当しうる恐れ」について2月2日の段階で金田法務大臣は「犯罪行為を反復・継続していることが条件になる」旨を答弁していたが、その後の山尾議員の質問主意書への答弁書では「反復・継続」の条件はなくなり、また同日閣議決定された法文の文言でも「反復・継続」の文言は抜け落ちていた点を階議員は説明。「反復・継続性ということがなければ後付けで組織的犯罪集団を認定できるようになる。ある重大犯罪について共謀という事実があったということになった場合、その人たちがある会社の社員だったとき、共謀という事実をもってして、犯罪を目的とした集団だということで『組織的犯罪集団』ということで認定されかねない」との認識を示し、同日の委員会質疑で金田大臣もその指摘を否定しなかったと階議員は説明した。

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