衆院法務委員会で19日、共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)が実質審議入りし、冒頭1時間、安倍総理出席のもと質疑が行われた。委員会の冒頭、委員長は職権で刑事局長ら政府参考人の出席についての採決を行い、与党の賛成多数でこれを強行した。
質問に立った山尾志桜里議員はまず、冒頭の強行採決について「本来質問者の判断で政府参考人を答弁者として登録するルールを無視し、自民・公明両党の同委員会の理事・委員のみならず、公正中立であるべき委員長までがグルになって刑事局長を無理やり呼ぶなんて聞いたことがない」と指弾。「この言語道断の強行採決でスタートしていること自体が、政府がいかにこの法案に自信がないということの証拠だ」と述べ、断固抗議する考えを示した。
質疑では、対象や組織敵犯罪集団の解釈などをめぐる安倍総理の発言のブレについて具体例を挙げて問題視。「組織的犯罪集団と絞ったふりをしても一般市民が対象になってしまうか」との趣旨の質問に対する「組織的に、まさにそれで生計を立てている。生業に、というのはそういう意味」との安倍総理の答弁について、「その答弁を前提にすると、テロ・犯罪で生計を立てていたわけではないオウム真理教は組織的犯罪集団に当たらず共謀罪の対象外になってしまうのではないか」とただすと、安倍総理は「テロを専門的にやっていくためにはその資金源を獲得し、テロ行為を行いながら生活を立てていく過程も経ていく必要がある。正確な答弁を求めるなら事前に通告してもらいたい」などと弁明した。安倍総理がテロ活動の資金源を断つ必要性に言及したことから、山尾議員は処罰対象となる犯罪リストがずれていると指摘。「きのこ狩りや、お墓を荒らす、ごみを収集する。これがテロリストの資金源になるから厳しくしてテロを防ぐというのは圧倒的なリアリティの欠如。現実味のなさに国民の皆さんも大変驚いている」と断じた。
そのうえで山尾議員は、「現実感のないテロ対策ではなく、私たちは現実味のある、効果的なテロ対策をやりたいと思っている。(テロ防止関連条約のうち)未批准の5条約はなぜ締結を検討されないのか。今民間航空会社になっている水際対策の責任を、国がもっと責任をもって予算措置や前面に立って権限を負っていこうとしないのか。私たちはこうした方針のもと昨年議員立法も出しているが審議に応じていただいていない。こうしたことこそ、まじめなテロ対策ではないか」と提起。安倍総理は5条約の締結国数が少ないことなどを理由に国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を優先させる考えを示したが、山尾議員は「TOC条約はテロ対策のための条約ではない。(5条約について)中身に問題がないのであれば率先して日本が入り、テロ対策の国際協調をリードする立場にあるのが日本ではないか。5条約のうち2条約はアメリカを含めてG7も入ってすでに発効している」と求めた。
山尾議員は、「テロ対策にどこまで本気なのか。共謀罪法案がテロ抑止になるという説得的な説明は一つもなかった。では共謀罪を作った時に何が起こるのか。私は捜査機関の監視が強まると思っている。テロ対策にならず監視が強まるなら百害あって一利なしだから廃案にすべきだ」とあらためて表明。「捜査機関が常時国民の動静を監視する監視社会にはならない」という安倍総理の発言を受け「常時ではないが国民を捜査として監視しているのかいないのか」と迫ると、安倍総理は「監視という意味はどういう意味で使っているのか」とはぐらかし、答弁を避けた。
山尾議員は「安倍政権でGPS捜査がなされ、最高裁判例でGPS捜査は違法だと出ている。まさに安倍政権で違法な監視捜査がなされていた。これを広く277以上も違法な捜査を合法化したら監視権限が強まるのではないか。大変危惧している」と訴え、質問を締めくくった。