衆院法務委員会で19日、共謀罪法案(組織犯罪処罰法改正案)について質疑が行われ、井出庸生議員はいわゆる一揆を例に挙げて、組織犯罪に関わりのある人とそうでない人を区分けする問題について政府の見解をただした。

 質問に先立って井出議員は、鈴木法務委員長が政府参考人として法務省刑事局長の招致を強行採決した問題に関して、政治家同士が議論を深めるために改正した衆院規則に反するものだと指摘。このような委員長の対応について「立法府の矜持、自負を歪めてしまったと言わざるを得ず、強く抗議する。委員長としてふさわしいかどうかも問われるべき重大な事態だ」と問題視した。

 金田法務大臣に対して「共謀罪法案の魂、根幹を語ることができなければ、大臣たる資格がない」と指摘したうえで、その説明を求めたが、大臣は法案の概要しか述べられなかった。それを受けて井出議員は、政府から聞いている法案目的を説明したうえで、「TOC条約(国際組織犯罪防止条約)に入ることはいいが、条約に入るための手段に『テロ等準備罪』という名前を付けて大々的に宣伝するのは、国民をだましているに等しい」と政府の法案説明に疑問を呈した。

 また、1761年に長野県で発生した上田騒動という一揆を例にして、共謀罪法案の持つ問題点をただした。「一揆の目的は、生活に困窮した農民がその改善を求めて訴え出るもの。訴えが聞き入れられなければ、庄屋らの建物を破壊したりする。計画、準備行為、組織性があり、一揆というものはテロ等準備罪に当てはまってしまうのではないか」と政府側の見解を求めた。

 金田法相は、「過去の歴史上の出来事であり、その事実関係や歴史的評価について法務当局としてお答えする立場にはない。要件の該当性についてお答えするのは難しい」と答弁し、具体的な答弁は避けた。一揆を例に挙げた意図について井出議員は、上田騒動を起こした長野県青木村が現在、圧政に屈せず、行動した先人の思いを称えて「義民の村」と呼ばれていると指摘し、当時の支配層からテロと見られた行動が今日では義民と称えられているように、組織犯罪に関わりある人とない人とを区分けすることの難しさに理解を深めるよう求めた。

法務大臣をただす井出議員

法務大臣をただす井出議員