衆院議院運営委員会で1日、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」の審議が行われ、民進党の馬淵澄夫議員が質問に立ち、(1)将来の先例となり得ること(2)法律の施行日(3)女性宮家創設等――について政府の見解をただした。
馬淵議員は冒頭、昨年8月8日の天皇陛下の「おことば」を受け、衆参両正副議長のもとで各党・各会派が参加する全体会議で天皇の地位について議論し、立法府の総意として取りまとめがなされたことについて、「国権の最高機関たる国会が主体的に議論を進め、法案作成を主導したことは画期的なことであり、天皇の地位は『主権の存する日本国民の総意に基づく』と規定する憲法1条の趣旨に合致するものだ」と述べ、衆参両正副議長の取り組みに敬意を表した。
本法案については、(1)特例法が皇室典範と一体をなすものであると皇室典範附則に明記されること(2)一般名詞として「天皇の地位」が明記されていること(3)国民が陛下の「お気持ち」を理解し、共感しているという記載があること(4)退位についての皇室会議の関与等――と立法府のとりまとめに沿ったものであり、「法案自体に賛成するものである」と表明した。
将来の先例となり得ること
本法案の先例性に関連して、民進党の基本的考え方について「皇位が『皇室典範の定めるところにより、これを継承する。』と憲法2条で規定されていることから、特例法ではなく皇室典範改正による制度化が必要」「124代中、58方の天皇が生前退位しており、長い歴史の中でむしろ普通のことであり、伝統に合致するという点でも退位制度の恒久化が必要」だと説明した。
結果的には、皇室典範の付則の改正で対応することになったが、「その付則の最初に出てくる『退位』とは、特例法の名称とは別個の普通名詞としての『退位』であり、将来の退位の際の先例となり得ることの論拠となっていると考えるが、政府としても同様の見解か」とただした。それに対して菅内閣官房長官は「政府としても衆参両正副議長の『議論のとりまとめ』を厳粛に受け止め、その内容を忠実に反映した法案を立案した。この法案は天皇陛下の退位を実現するものではあるが、法案作成に至るプロセスやその中で整理された基本的な考え方については将来の先例となり得るもの」と答弁した。
法律の施行日
また、法案の施行期日が付則で「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」とされていることについて、「政府として努力目標としている年限・期日を具体的に明示すべきではないか」「皇室会議の関与がしっかりなされるのか」をただした。菅官房長官は「退位に向けて準備が必要となる事項は多岐にわたり、現時点で検討・準備に必要な期間を判断することは困難だが、所管省庁が十分に連携を取りつつ、円滑な退位が遅滞なく実施できるよう最善の努力をする」と答えた。
女性宮家創設等
最後に皇位の安定的継承に関して女性宮家創設等について政府の見解をただした。先般報じられた秋篠宮眞子さまのご慶事に触れて「現行制度では眞子さまがご結婚されれば皇室を離脱しなければならない。女性皇族が順次ご結婚されれば、皇族方が減少していくことが紛れもない事実だ」などと現状認識を示し、「皇位継承について今起きている現実を踏まえて議論することは政治の責任である」と指摘。政府に対して「『女性宮家の創設等』は立法府、各党・各会派の合意事項であることを重く受け止め、検討を行うべきだ」「法施行後速やかに検討を行うためにも、法施行前にも検討を行うべきではないか」などの点について認識をただした。菅官房長官は「『議論の取りまとめ』を受けた各政党・各会派間の協議を踏まえ、これまでの議論の経緯を十分検証しつつ、法施行後の具体的な検討に向けて適切に対応する」と答弁した。