衆院で10日、文部科学委員会と内閣委員会の連合審査会が開かれ、加計学園問題などについての質疑を行った。
2番手として質問に立った緒方林太郎議員は、まず九州北部豪雨を取り上げ、復興のための激甚災害指定の考え方について質問。菅官房長官は、「人命を第一に、被災自治体と緊密に連携をしながら政府一体となって被災者の救命救助、避難されている方々への支援等の災害応急対策に全力で取り組んでいる。指定については、被災自治体の協力を得て被害状況の把握を迅速に行い、スピード感を持って対応していきたい。状況に応じて政府としてできることはすべてやる」と述べた。
また、被災地の主たる産業である農林業の復旧について齋藤農林水産副大臣は、「人命救助が優先。現地の調査もままならない状況であるので、きちんとした被害の実態把握をした上で、農業がこれからも前向きに取り組んで行けるよう全力を尽くしていきたい」と述べた。
獣医学部新設問題では、もともと「空白地域に」「1校限り」などとしていた設置条件を安倍総理が「2校でも3校でも意欲あるところにはどんどん獣医学部の新設を認めていく」と発言したことについて、2校3校と増やして新しい分野(ライフサイエンス、創薬など)の需要があるのかを質問し具体的なデータを求めた。
山本(地方創生担当)大臣は、「新しい分野の需要は、はっきりある。ただ何人いるかということについては誰もはっきりと言えない」と述べ、需要について具体的なデータを示すことはなかった。緒方議員は、「具体的なことについては安倍総理が来て説明していただかない限り分からないということになる」と述べ、予算委員会の集中審議を求めた。
また、獣医学部認可に関する「石破4条件」を現在満たしているのかを質問。山本大臣は「当然思っているから11月9日の制度改正で獣医学部新設を認めることにした」と答弁。その後、規制改革の基本的な考え方、今回認めるに至った経緯、検討した4条件についてそれぞれ個別の説明など、早口で4分以上にわたり答弁書を延々と読み上げた。緒方議員は、「分かりやすく説明すると安倍総理は言われた。今の説明が分かりやすかったか。安倍政権の姿勢を強く疑わしめる答弁だ」と山本大臣の答弁姿勢を厳しく批判した。
あらためて石破4条件の具体的な需要について質問すると、山本大臣は「需要の量とか数についてはっきり示すことは無理。4条件のどこに数や量が書いてあるのか。書いていない。定性的な傾向があれば十分だ」との見解を示した。これを受けて緒方議員は、「需要供給曲線を描くときには数量の話をするのに、この石破4条件の具体的な需要になると、いきなり数量ではなく定性的だと(答弁する)。ダブルスタンダードだ」と指摘した。
続けて、「文部科学省は新たな需要は自分たちとしては明らかになっていないし、既存の大学で対応できていると説明している。それを『何も説明していない』『何の説明もできていないから押し切る』といって、ほとんど言いがかりに近いことを言い、特区を成立させようとしている」と内閣府の姿勢を非難した。
最後に緒方議員は前川前文部科学事務次官に今回の議論についての感想を求めた。前川氏は「問題は、規制を改革したということとは別に、規制改革の際に、どのような条件を付して、結果として何が起こったかということ。穴の開け方のほうが問題だ。そちらのほうが真相解明の焦点になるのではないか」と述べた。さらに「規制改革を進めるに当たり挙証責任はどこにあるのかという議論はあるが、あくまでも政府部内の話であり、国民に対して説明できない話。国民に対する説明責任は政府一体として負わなければならない」と述べた。
※「石破4条件」
石破国家戦略担当大臣時代に「日本再興戦略改訂2015」(2015年6月30日閣議決定)で獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討に当たって示した(1)既存の獣医師養成でない構想が具体化し(2)ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らかになり(3)既存の大学・学部では対応困難な場合(4)近年の獣医師需要動向も考慮しつつ、全国的見地から検討を行う――の「4条件」。