衆院予算委員会で3日、2016年度本予算の基本的質疑の民主党2番手として質問に立った大西健介議員は、甘利前大臣の政治資金をめぐる問題に関して民主・維新両党合同の甘利前大臣疑惑追及チームが行った都市再生機構(UR)等へのヒアリングで解明された事実に基づき、安倍総理らに質問した。
大西議員は今回の問題は千葉北部地区北環状線工事に係る建設会社(S社)へのURの対応に関連して甘利前大臣自らと甘利事務所秘書が当該建設会社から金銭を受け取り、またURが甘利事務所と12回も接触していたこと等からも、あっせん利得処罰法に違反する恐れがある事案であると指摘。甘利前大臣の説明記者会見前から問題なしとして大臣続投支持を表明した安倍総理に対し、東京地検特捜部がURへの調査を開始したことをどう受け止めるかただしたが、「コメントを差し控える」と逃げの答弁に留まった。
大西議員はまた、この案件に関して自民党の高村副総裁が「わなにはめられた」と策略論をまことしやかに発言し、甘利前大臣を擁護している点を「ナンセンスだ」と批判。(1)仮に策略であっても犯罪の成否には無関係であり、免責されることはない(2)ただ録音や写真を撮ることが目的なら2年半以上も口利きや接待・金品の提供を受けるのは不自然(3)わなにはまってURから補償金を引き出すことに加担したとしたらより悪質である(4)わなにはめられたというのであれば、S社社長が甘利明大臣の後援会「甘山会(かんざんかい)」の会長であり、同社総務担当者Iを安倍総理主催の「桜を見る会」に招待していることの説明がつかず、この2つの事実からはむしろ懇意な間柄と推測できる――等を指摘し、策略論を否定した。
大西議員は甘利前大臣の辞任記者会見にも注目し、「S社から受け取った計100万円については政治資金収支報告書で適正に処理した」「(甘利事務所の)A秘書やC秘書が金銭交渉に介入したことはない」と述べた発言について疑問点を列挙した。
疑問1 前大臣が受け取った現金100万円の政治資金収支報告書での処理は本当に適正か
前大臣が2013年11月14日に大臣室で受け取った50万円と14年2月1日に大和事務所で受け取った50万円について、甘利前大臣が総支部長をつとめる自民党の神奈川県第13区総支部では14年2月4日付で「S社から100万円の寄付金」と記載されていることを取り上げた。
大西議員は政治資金規正法では寄付を受けた場合は明細書の記載を求めており、それがなければ政治資金規正法違反であると指摘するとともに、13年と14年と2回、年をまたいで受理した現金をまとめて収支報告書に記載した処理は果たして適正処理と言えるか疑問だとして総務省に確認した。高市総務大臣は毎年12月31日現在で1年単位の収支を届け出なければならないと定めている旨を説明。甘利前大臣は辞任会見で「適正処理した」と胸を張ったが、この答弁も踏まえて大西議員は、「年が違うものを適当に足し上げて記載することが許されるのであれば、法の趣旨をなきものにする」処理だと指摘した。
そのうえで大西議員は、14年2月4日付で記載されている「S社から100万円の寄付金」を「別の寄付だと疑っている」とも述べ、その点に関してS社が証言する記事が4日発売の週刊文春に掲載予定である点にも触れ、この点の検証の必要性にも言及した。
疑問2 「A秘書やC秘書が金額交渉に介入したことはない」との前大臣の発言は本当か
大西議員は特にS社の総務担当者も伴っての甘利事務所秘書とUR職員との12回にも及ぶ面談対応状況を提示(PDFダウンロード参照)。民主・維新両党合同の甘利前大臣疑惑追及チーム会合ではURの担当者が「こんなに呼ばれることは異例のこと」との認識を示したとも説明した。UR側が開示した15年10月9日と10月28日の甘利事務所秘書とURとの面談記録には「率直な意見だが当該地から速やかに移転してもらった方が良いのではないか」「補償が満足いかない額だから上乗せをと考えているということか」「結局カネの話か」「少しイロを付けてでも地区外に出ていってもらう方がいいのではないか」「甘利事務所の顔を立ててもらえないか」「一体先方はいくらほしいのか」「私から先方に聞いてもよいが」といった甘利事務所秘書の発言が記録されており、大西議員は「金銭交渉への介入そのもの」「辞任記者会見での甘利前大臣の説明は虚偽そのもの」などと断じた。
さらに大西議員は、UR職員が12回の面談のなかで甘利事務所の秘書に前大臣がこの案件を知っているかを確認し、大臣も承知の案件であるとの回答を得たとUR側が説明していることを、甘利前大臣の関与の立証につながるものだと指摘。甘利事務所秘書に対しUR職員が「これ以上は関与しない方が宜しい」と発言したことも、UR側に「口利きあっせん」との認識があったことをうかがわせると指摘した。