衆院予算委員会で4日に行われた2016年度本予算に関する基本的質疑で、大串博志議員は、憲法改正について安倍総理の認識をただし、あらためて「この総理の下での憲法の議論は進め難い」と断じた。

 安倍総理が3日の同委員会での自民党の稲田議員との質疑のなかで、戦力不保持を定めた憲法9条2項に関し「7割の憲法学者が自衛隊に憲法違反の疑いを持っている状況をなくすべきだとの考え方もあり、私たちの手で変えていくべきだとの考えの下で自民党の憲法改正草案を発表した」などと発言したことを受け、大串議員は、今夏の参院選挙で憲法9条の改正も争点として訴えていく考えはあるかを質問。安倍総理は「9条の改正については国民の議論が熟していない」と言及を避けた。

大串議員資料1

大串議員資料1


 大串議員は、憲法改正についての民主党の立場を「憲法のあり方を時代の変化に応じて広く国民と議論していくこと自体は否定していない」と説明したうえで、憲法に対し「GHQが押し付けたもの」「日本人にとって、心理的、精神に悪い影響を及ぼしている」といった認識を持っている安倍総理の下での憲法改正には危機感を覚えるとあらためて指摘。こうした発言を取り消す考えはあるかをただしたところ、安倍総理は、「民主党は具体的な憲法改正草案を出していない。そうであれば弱々しい言い訳に過ぎない。指一本触れないのとまったく同じ」などと述べ、民主党への一方的なレッテル貼りに終始した。

大串議員資料2

大串議員資料2


安倍総理を追及する大串議員

安倍総理を追及する大串議員

 これに対し大串議員は、憲法改正を掲げながら、それができないとなると96条の憲法改正手続きの変更を目論み、それも国民世論が高まらないと次は憲法解釈の変更という形を取った安倍総理の政治手法を取り上げて「姑息に憲法解釈の変更をするような集団的自衛権の行使容認の議論の方が弱々しい」と反論。関連して、今夏の参院選挙の争点に掲げた憲法改正で安倍総理が創設を目指す考えを示している「緊急事態条項」について、「災害や有事など緊急時に国民がどのように振る舞うかは議論すべきという話はあるが、これは憲法を一時停止する、全権を内閣総理大臣に集中させるという条項で大変大きな意味を持つ。これに対し災害等に対応できるように、例えば、総理大臣は『国民に物資をみだりに購入しないでください』という協力要請をできるとする災害対策基本法や市町村長にいろいろな強制権を付与する災害対策規則基本法など、現に法律で手当されている。現行法でなぜ対応できないのか」と迫った。安倍総理からは明確な答弁はなく、大串議員は、ヒットラーのナチスが全権委任法を成立させ、ワイマール憲法が保障していた国民の諸権利を永久停止させて独裁政権を樹立したことにも触れ、「(緊急事態条項が)必要だということがまずありきで思考停止になっているのではないか。憲法を停止するような大変重い内容であり、この総理の下での憲法の議論は進め難い」と質問を締めくくった。