衆院本会議で13日午後、熊本地震災害対策関連の2016年度補正予算の審議が行われた。

 民進党から質問に立った福島伸享議員は、東日本大震災の際に地元の水戸市で目の前の建物が崩壊し、石の塀が次から次へと倒れていく様を目にし、余震が続く中で家族とともに真っ暗で寒い車の中で不安で眠れぬ一夜を過ごしたこと等、自らの経験も踏まえ、「被災地の皆さんの思いに寄り添っていきたい」と述べ、政府の対応に関して安倍総理らにただした。

 冒頭で福島議員は、「大規模災害対応には、与党も野党もない。一日も早い被災地の復旧・復興に向けて、政府の取り組みに全面的に協力していく」と述べた。

 そのうえで地震の名称について、東日本大震災は当初「東北沖大地震」と言っていたが、被害が広範囲にわたることが明確になるなか、閣議で「東日本大震災」と名称を変更したことを取り上げ、「今回も、熊本県だけでなく大分県なども大きな被害を受けている。熊本地震という名称ではその他の地域が忘れられがち」「特定の地域を名指しすると、大きな被害を受けていない県内観光地などで風評被害が起き、経済復興が余計に遅くなる」と指摘し、あらためて適切な名称を考えて閣議決定すべきだとして、安倍総理に答弁を求めた。安倍総理は「熊本地震については通例に従い気象庁が命名したもの」だとして、名称変更の予定はない旨答弁した。

 福島議員はまた、すでに始まっている風評被害の払しょくには、今政府が行っているようなサイトでの情報提供程度では不十分だとして、「被災地の高速道路を一定期間無料にするなどの思い切った対策が必要」として抜本的な対策を講じるよう求めた。

 震災対策の初動についても福島議員は着目し、東日本大震災の経験を受けて民主党政権時に改正された石油備蓄法に基づき、震災2日後に迅速に災害時石油供給連携計画を発動してガソリン不足の状況を改善するなど、関係者の尽力を評価すべきところも多々あるとの見方を示した。その一方で、これまでの大震災に匹敵する被害を受けていることが明白で、蒲島熊本県知事ら地元から激甚災害の指定を求める悲痛な声が出ていたにもかかわらず、政府は「関係の自治体になるべく早く復旧の見通しを出してもらって数字を積み上げていかなければできない」という官僚的なしゃくし定規の答弁を繰り返し、政府の迅速な対応が見られなかったことを問題視。震災から10日以上経った4月25日にようやく激甚災害の指定が閣議決定されたことについて、「よもや4月24日の衆議院補欠選挙の前に安倍総理が被災地を訪問した後に閣議決定するという選挙目当てのパフォーマンスであるとは思いたくないが」と遅きに失した政府の対応を非難した。

福島伸享議員が質問

 地震直後に政府が河野防災担当大臣から現地の松本副大臣を通じて被災者の屋内退避を強く要請し、熊本県知事から「現場の気持ちを分かっていない」と不快感を示されたことに関しては、「1回目の地震の2日後にさらに大きな本震が来たことを考えれば、現地の人がこの要請を守っていたらどうなっていたのかとゾッとする」との所感を述べ、国は気象状況等を県に伝えるにとどめた上で、避難方法は自治体現場の判断に委ねるべきだと問題提起した。

 本震2日後の4月18日に安倍総理の強い意向でTPP特別委員会が開かれたことに関しては、「この時には多くの方が崩落した土砂などに生き埋めになり、『72時間の壁』が迫る中で懸命の救助活動が行われており、私は『国会が今こんなことをしていていいのか』と忸怩(じくじ)たる思いを強く持った」との見解を述べ、民進党は政府が震災対応に全面的に当たるため委員会の開催は見合わせるべきとの申し入れを行ったことにも言及した。TPP審議は結局、政府が過剰な情報隠しとずさんな答弁を繰り返した挙句、頓挫してしまってことにも触れ、一連の対応に関して「委員会を開く、開かないは国会で決めること」などと他人事のような答弁している総理も含め、政府の方針について「そうまでして、ただでさえ農業県熊本の皆さんを不安にさせるTPPの審議を進めようとしたのか」と批判した。また、今回の地震は農繁期における地震で、農家の皆さんが営農を継続するためにはキメ細かな対応が必要だとして、農業関連施設は残存簿価がないものも多く、仮に査定を受けたとしても残存簿価による復旧支援では営農再開ができないことが多々あることを指摘し、農林水産大臣に適切な対応を求めた。これに対して農水大臣は「支援策を引き続き検討していく」と述べるにとどまった。

 201億円計上されている被災者生活再建支援金補助金については「私自身の経験でも市内で家が全壊した人は、その後多くが住み慣れた土地を離れざるを得なかった。家が全壊しても新しく家を建て替える時に300万円しか支給せず、住宅本体の再建に使えない現行制度こそ、今も東北の多くの人々が仮設住宅を出られない一つの大きな原因となっている」と現状分析し、民進党をはじめとする野党各党が同日、この支援金の額を300万円から500万円に増額する被災者生活再建支援法改正案を国会に提出したと述べた。「熊本の皆さんが長い間仮設住宅で過ごさざるを得ないような状況を少しでも減らすために、この法案を与野党一致して成立させるなどによって支援金の額を引き上げるべき」と表明。また、災害救助制度や被災者生活再建支援制度の地方自治体の負担について、東日本大震災における対応のように地方自治体がなるべく負担をしなくていいように交付税などで手当てすべきであることも問題提起した。

PDF「20160513衆院本会議財政演説に対する福島伸享議員質問全文」20160513衆院本会議財政演説に対する福島伸享議員質問全文