衆院本会議が28日夕、開かれ、2018年度政府予算と国・地方の歳入関連法案が与党の賛成多数で可決された(写真上は地方税法改正案等の反対討論をする無所属の会の金子恵美議員)。
政府予算採決に先立ち、民進党衆院会派の「無所属の会」、立憲、希望、共産、自由、社民の6党・会派で提出した「平成30(2018)年度一般会計予算、平成30年度特別会計予算及び平成30年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議」の提案理由説明が行われた。
編成替えを求める理由は(1)「人への投資」をうたっておきながら、予算配分が不十分である(2)地方は忘れ去られたかのような扱いをされ、地域の自主性・独自性の生かしにくい霞が関主導の枠組みとなっている(3)自公政権の農業政策では、農家の方々の将来の展望が全く開けない状況にある(4)2017年度補正予算額と18年度当初予算額の合計が18年度概算要求額を超える事業が数多く存在し、厳しい財政状況の中で不要不急と思われる事業に過度な予算配分を行うことは不適当――等の4点。予算編成替えの概要は下記の通り。
■歳出の追加(1.9兆円程度)
(1)人への投資(0.4兆円程度)
- 小・中学校の給食費無償化に向けた負担軽減(0.2兆円程度)
- 所得制限なしの高校無償化
- 保育士等の給与引上げ(0.2兆円程度)
(2)地域活性化(1.5兆円程度)
- 一括交付金の復活(0.7兆円程度)
- 農業者戸別所得補償制度の復活(0.8兆円程度)
- 養豚経営安定化対策(豚マルキン)補填率引上げ・国庫負担率引上げ
(3)国民の信頼を取り戻すための経費
- 2013年度労働時間等総合実態調査の再実施を含む裁量労働についての全般的な再調査
- 森友・加計問題を踏まえた公文書管理の適正化(野党共同提案「公文書管理法改正案」に基づく)
- 政府提案の生活保護基準見直しの再考
■歳出の削減(1.9兆円程度)
- 水膨れ予算の適正化(0.4兆円程度)
- 一括交付金見合いの交付金・補助金の廃止・縮減(0.7兆円程度)
- 農業者戸別所得補償制度財源としての交付金等の廃止(0.8兆円程度)
平成30年度一般会計予算、平成30年度特別会計予算及び平成30年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議
政府予算組み替え動議に賛成し、政府予算に反対する立場で討論に立った無所属の会の福田昭夫議員は、「予算審議では、予算の欠陥が明らかになるだけではなく、さまざまな問題、疑惑が浮上した」と述べ、まず佐川国税庁長官の虚偽答弁問題を取り上げ、「完全に虚偽答弁だったことが明らかになり、前代未聞の事態にもかかわらず、安倍総理及び自民党は、野党による佐川長官の証人喚問要求、罷免要求を拒否し続けている。納税者には1円の間違いも認めない書類を求めておきながら、平然と公文書を破棄したと嘘をつく人物が国税庁のトップに君臨していては、多くの納税者の怒りを買うのは当たり前。佐川氏は国税庁長官に出世し、今も安倍政権により手厚く守られている」と断じた。
「次は裁量労働制に係るデータねつ造疑惑」だと述べ、安倍政権は裁量労働制の適用範囲の拡大を目指しているが、その根拠としてきたデータは異常値が次々に見つかり、政府の説明を根底から覆す異常事態にもかかわらず、安倍総理は厚労省に責任転嫁をし、全く責任を感じていないようかの答弁を繰り返していると問題視。「こうした安倍政権の無責任体質は、予算にも色濃く反映されている。一般会計総額は97.7兆円となり、6年連続で過去最高を更新し結局財政出動に頼っているのが現状」だと指摘し、反対を表明した。
衆院本会議 福田昭夫議員 組み替え動議賛成・予算原案反対討論(予定稿)
■予算委員長解任決議案
予算の採決に先立ち、採決日程を職権で決めた自民党の河村予算委員長に対し、民進党衆院会派の「無所属の会」、立憲、希望、自由、社民の5党・会派が共同提出した解任決議案の採決が行われ、無所属の会の菊田真紀子議員は賛成の立場から討論を行った。
解任決議案賛成討論では、予算委員会質疑で(1)森友学園への国有地売却問題に関する佐川国税庁長官の情報隠ぺい・虚偽答弁及び安倍昭恵総理夫人の関与、(2)裁量労働制をめぐる重大なデータの誤り――という2つの大きな問題が浮き彫りになった点を指摘した。(1)について予算委員長は疑惑解明に向けて両者の国会喚問を求める声が高まったにもかかわらず、断固として応じなかった。(2)に関しては、明白な誤りがあったデータを再調査し働き方改革関連法案の提出を見送るのが妥当であるにもかかわらず、政権がそれを明確にしない中で予算の採決を強行したことは中立・公平であるべき委員長の職責に反し、国会の権威を失墜せしめる行為であると断じた。
■地方税法等改正案、地方交付税法等改正案
「地方税法等の一部を改正する法律案」及び「地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案」に対し、無所属の会の金子恵美議員は反対の立場から討論を行った。
地方税法等の一部を改正する法律案については冒頭、「給与所得控除の引き下げ、頭打ちなどの見直しについては、働き方改革に名を借りた、理念なき増税策にすぎない」と批判。政府税制調査会では「公平・中立・簡素」という税制の大原則を強調したが、実態は所得税制をいたずらに複雑にするもので、大原則とは正反対の内容だと指摘した。約230万人もの年収850万円超のサラリーマンを増税する一方で、フリーランスのなど自営業者の税負担を多少軽減する内容である点も問題視。「サラリーマンは軽い税負担であるといったデータは見たことがない」と述べるとともに、そもそも所得捕捉率が違うのであれば、改正案は議論が成り立たないと指摘した。
衆院本会議 金子恵美議員 地方税法改正案等反対討論(予定稿)
■所得税法等改正案
「所得税法等の一部を改正する法律案」に関しては無所属の会の広田一議員が反対の立場から討論を行った。所得再分配機能を回復して格差を是正することは時代の要請だが、今回の見直しは、所得税制をいたずらに複雑化し、「公平・中立・簡素」という租税の大原則からかけ離れた姿になっていると批判し、所得税改革のあるべき姿は、所得再分配機能の回復・強化、ライフスタイルに中立で公正な税制の構築、労働力人口を促す成長戦略の観点等から、「所得控除方式を転換して税額控除方式に切り替えていくこと」だと指摘した。行きつく先は所得よりも控除額が多い人には、給付がされる「給付付き税額控除」の創設であり、それこそが、税制改革でやるべき「格差是正策」であると提案した。