江田憲司代表代行記者会見

2016年5月16日(月)15時02分~15時24分
編集・発行/民進党役員室(項目ごとに編集しました)


■質疑

■冒頭発言

【代表代行】
 私のほうからは特にございませんので、何かご質問があれば。


■質疑

○JAについて

【フリーランス・宮崎記者】
 JA、農協に関して、ちょうどTPPの審議が止まったところなので伺いたいが、昨年の予算委員会で江田さんはJAバンクに関して、JA側から見て非常に厳しい言い方、改革の対象だとおっしゃった。一方、現在の民進党では衆議院等で、期数の浅い、地元のJAの大変な支持があって小選挙区に勝っている先生が多いかと思う。TPPの審議に参加していた方も、そういう方が多いのではないかと思う。そういったところで、JAに関して、江田さんご自身のお考えと、民進党全体の中でどういった考え方をしていくか伺いたい。

【代表代行】
 JAというのは、歴史をひもとくと、地域コミュニティの核として地域おこしの中心となってきた存在ですよね。まさに「協同組合」と称しているように、農業の協働組織だというのが基本的な性格です。そういう意味からして、員外、農業に従事する人以外の者を対象に大きな金融事業をやっていることが、本来のJAの本旨に照らして適当かどうかという大元の議論がある。ですから誤解なきように申し上げると、JAの存在自体を否定しているわけではなくて、JAは本来の農業・農家の協働組織であるという本旨に従った、もっと農家のためになる事業をやってくださいよと。こういう趣旨で昨年、申し上げたと思います。この点につきましては安倍総理も、当然そういう問題意識のもとにやっていくのだという答弁があったと思います。
 肝心なことは、ずっとこの数十年来衰退してきた農業を、いかに将来に向かった成長産業にしていくかということです。それについてのJAの役割というものは引き続き重要だと。もっと農家のために仕事をするJAであってほしいということだと思います。

○アベノミクスの評価と消費税増税について

【日本経済新聞・永澤記者】
 今朝の衆院予算委員会で岡田代表はアベノミクスについて厳しく批判していたが、重ねてになるが、代表代行の現状のアベノミクスの評価を伺いたいのと、かねて代表は消費増税についても、政権がアベノミクスによって引き上げられる環境をつくらなければいけないとおっしゃってきた経緯があるが、増税できる環境にあるのかどうか伺いたい。

【代表代行】
 アベノミクスの「3本の矢」につきましては、私は一貫して、「第1の矢」、金融緩和の矢は飛んだ、「第2の矢」、機動的な財政出動の矢はあらぬ方向に飛んでいる、「第3の矢」、成長戦略の矢は飛んでいない、というふうに申し上げておりまして、基本的に岡田代表と私の認識は一致していると思います。
 「第1の矢」について特に申し上げれば、確かに大胆な金融緩和で一時的に日本経済というか日本の体はシャキッとしました。円は円高から円安に振れ、輸出産業中心に収益も改善して、株も上がり、そういった効果は確かにあったけれども、私は当初から指摘していたように、カンフル剤は2本も3本も打てませんよと。打っても効果は減殺されていきますよと。そのとおりのことが起こっている。その後、2本目のカンフルを打ち、3本目のカンフルをまさに打った。しかし、もう金融緩和は効かないどころか、弊害が出てきているというのが私の基本的な認識です。
 「第2の矢」の財政出動は、私はこれは予算委員会で2月にやりましたが、公共事業のバラマキと300を超える基金への“ブタ積み”で終わっていると。今、我々民進党が訴えている所得再分配、もっと平たく言えば国民の懐を暖かくする、家計を暖かくするような政策が行われていない。
 だからこそ、民進党は介護や福祉、子育て・教育支援を通じて家計を暖かくし、それが消費につながっていく。GDPの6割を占める(個人)消費が増えれば、経済成長にも資していく。決して経済成長のために懐を暖かくすると言っているわけではなくて、まさに我々の所得再分配、介護や福祉、子育て・教育支援、こういったところで、バラマキではないしっかりとしたディシプリン、規律を持った政策をすることによって結果的に、カネに色はついておりませんので、若干暖かくなった懐から財布の紐を緩めて消費に回していただければ、それが経済成長にもつながって、それがまた税収を生んで、またその再分配という形で国民の生活も豊かになるだろうと。そういった意味での好循環をすべきだということなので、ここは基本的に「第2の矢」の安倍政権と民進党の違うところです。それを別の言葉で言えば、「所得再分配」と申し上げましたが、「格差是正」ということにもつながるのだろうと思います。
 「第3の矢」につきましては、これは全く飛んでいない。まさに規制改革を初めとした成長戦略、生産性の向上という面では、ほとんどこれがなされていないがゆえに、持続的な景気回復につながっていないどころか、景気は悪化の一途をたどっている。簡単に、ありていに言えば、カンフル剤を打つのはよかったのです。カンフル剤で体がシャキッとしている間に体質改善、あるいは手術にまで踏み込んでやれば、日本の経済は持続的に成長していった、景気回復も持続可能になったのですが、この「第3の矢」が既得権益を打破できない。
 思い起こせば、安倍総理がダボス会議に何年か前に行かれて、「岩盤を打ち破る」「いかなる既得権益といえども、私の『ドリル』から、無傷ではいられません」と言って、規制改革にあれだけの決意を示されたのに、ほとんど景気にプラスに影響するような規制改革はなされていないというのが現状でございますので、まさに構造改革、今朝ほども岡田代表が予算委員会で安倍総理に構造改革ができていないのが根本的な問題だというようなことを指摘されたが、まさにこの点も私も全く認識を同一にするものでございます。
 それから、消費増税の環境が整っているかといえば、現状では整っていないと言うしかありません。
 民進党の消費増税に対する立場は、まず消費増税に耐え得るような経済体力に今あるのかというのが1点。2点目に、増税をするのであれば、まさに「隗より始めよ」、国会議員や役人が身を切る改革は進んでいるのかどうか。3番目に、消費税収が本当に社会保障の充実に使われているのかどうか。最後に、消費増税の持つ問題、逆進性を緩和する対策がとられているのかどうか。主にこの4点をもとに増税の是非を判断するというのが民進党のこれまでの政策というか基本的な考え方ですが、現時点で、じゃあこの四つの条件が満たされているかどうかと申し上げますと、満たされていないということでありまして、これを前提に、しかるべき時期に岡田代表がしっかりと民進党の立場を表明されると私は思っております。

【共同通信・比嘉記者】
 消費増税について確認だが、代表代行は現時点で消費税を上げるべきではないとお考えなのかどうかというのが1点と、安倍総理は前回、消費増税を先送りする時に、次は必ず上げる、環境整備をすると言っていた。アベノミクスのこれまでの経緯を含め、その決意が達成できなかったことについてはアベノミクスの要因なのか、それとも外的な要因なのか、そのあたりを伺いたい。

【代表代行】
 先ほど申し上げたとおり、四つの前提条件が満たされていないと私は思っておりますので、今時点で消費税増税ができるような状況ではないというのが私の考えです。
 安倍総理が前回、衆院解散の時に景気調整条項まで外して、必ず今度の10%増税は2017年4月からやるんだとおっしゃって解散した。そのことが結果的にうそになるようなことであれば、それは安倍総理の政治的責任が発生するというのは当たり前のことではないでしょうか。
 たしか私が維新の党代表、当時、民主党は海江田万里代表でしたが、いろいろな討論会に一緒に出席しました。安倍総理はそうおっしゃっておりましたし、当時、海江田代表も、景気調整条項まで外してやるというのはいかがなものかと。やはり増税というのは、先ほど申し上げましたように、それに耐え得る経済体力にあるのかどうかというのが一番重要なファクターになると私は思う。そのために歴代政権も苦しんできた。
 私がお仕えをした橋本政権でも3%を5%に上げる時にいろいろな苦悩がございました。結果的に5%に上げましたが、その時も橋本総理がるる述べておられたことは、やはり消費税増税ができるような景気・経済状況に持っていくんだ、これが総理の責任なんだと言い続けてまいりました。結局あの頃は株は2万円を超えておりましたし、経済も3%以上の成長があった。ですから前内閣の村山政権で決めた3%から5%への増税を否定するような状況では全くなかったわけで、それを1996年秋の総選挙で、初めて小選挙区が導入された選挙で、300選挙区、橋本総理は110ヵ所回られ、私は政務秘書官として全て同行いたしましたが、その全ての箇所において「私は魔法使いではない。打ち出の小槌は持っていないから、ぜひこのタイミングで5%増税をさせてくれ」と訴えて、当時211議席だった自民党の議席を239まで伸ばしたという事実がございます。
 事ほどさように、どの政権も増税は大変重い課題です。国民の皆さんの理解も得ていかなければならない中で、じゃあ今の経済情勢が、この8%から10%増税に耐え得るかどうかと考えた時に、私はそれは結論は明らかではないかと思っております。
 ただ、この一番の権限ある政権与党が、ああだこうだと言っているわけです。全国紙の一面報道で「増税先送り 与党幹部に伝えた」という記事が出るかと思えば、昨日のNHK「日曜討論」では、稲田政調会長は「今のところは予定どおり上げます」。官房長官もそうだ。安倍総理も、今日おっしゃったのですか、また。わけがわからないという状況なので。まあ、それなりの戦略・戦術を持ってやっておられるのでしょうから、我々野党第一党の民進党も、やはりそれなりの、それに呼応する戦略・戦術を持ってやっていかないと。この消費増税の問題というのは国政の根幹に関わる最重要課題の一つですから、そこはやはりしたたかにやっていかなければいかんのではないでしょうか。
 という意味で、今、民進党の代表は岡田克也さんですから、岡田代表がしっかり、正式な立場はしかるべきタイミングで表明されるのではないでしょうかというふうに、先ほど私は申し上げました。

○ヘイトスピーチ対策法案に関する有田議員のツイートについて

【フリーランス・安積記者】
 民進党の有田芳生議員がツイッターで、日本のこころを大切にする党について、「差別の扇動を容認する極右政党」と述べてしまって、これについて、日本のこころのほうからかなり反発が起こっている。これについてどう思われるか。もしご存じなければ、一般的に、他党について「差別の扇動を容認する極右政党」とか、そういう言葉を使うことについてはどう思われるか。

【代表代行】
 全く存じ上げませんし、どう思われるか。国会議員は、自民党にせよ民進党にせよいろいろな人がいます。お一人お一人の発言にコメントしていたら切りがないですから。
 しかし、少なくとも私はそういう言葉は使いませんけれども。公党に対する礼儀作法というのは基本的にはあると思います。

【フリーランス・安積記者】
 公党に対する礼儀作法という観点においては、その発言は、まだ確認されていないということなので、一般的に言って、この言葉は適切ではないということか。

【代表代行】
 それは、有田議員がどういうおつもりで言われたかわかりませんが、具体的に政策面であるとか理念であるとか、具体的な事象に照らしてそういうことをおっしゃることは自由だと私は思います。そこがよくわからないので。そういうことを確かめないまま、ああだこうだ、礼儀作法に反している、反していないと、今ここでコメントする立場には私はございません。

○部落差別解消推進法案について

【フリーランス・宮崎記者】
 今朝のNHKニュースでも報じられたが、部落差別解消推進基本法案というのを自民党と公明党が用意している。既に先週の木曜日に公明党の法務部門会議が決定したということだ。なかなか狙いがわからないところだが、既に14年前に地域改善に関する臨時財政特措法は失効しており、十数年たってなぜ改めて部落差別解消推進基本法案を国会に提出しなければならないのか。おそらくそれは差別の解消のためではなく、逆のほうで何らかの財政的な措置を狙っている組織があるから、参議院選挙の前に自民党と公明党のほうで話が出ているのではないかと思うが、この動きに関して何かご存じか、お考えがあれば伺いたい。

【代表代行】
 いや、全くわかりません。

○G7による財政出動を求める首相提案について

【フリーランス・宮崎記者】
 今日の予算委員会で岡田代表が、G7での財政出動に関して安倍総理に聞いていた。安倍総理からも、ゴールデンウィークの時にドイツからは断られたという話があったが、比較的虚心坦懐な答弁があったように思う。このサミットで、G7で財政出動しようという安倍総理の狙いに関してどのように分析し、また対応をお考えになるか伺いたい。

【代表代行】
 サミットでどういう宣言・声明等が出されるのか全くわかりません。ただ、横のほうで見ておりますと、伝えられるように安倍総理はそういう思いがおありになるのかなということなのかもしれませんが、私が承知しているヨーロッパの状況でも、ドイツのみならず、イギリスも含め、そういうさらなる財政出動については非常にネガティブな考えをお持ちになっているということでありますから、それが実際のサミットの場において合意されるかどうかというのは注視をしていきたいと思います。
 ただ、ずっとこの一連の年始、春先からの動きを見ていると、やはり伝えられているように消費税増税を凍結するためのいろいろなステップを踏まれているのかなという印象は受けます。だから国際金融経済分析会合もしかり、サミットのG7に向けての総理の動きもしかり。オバマ大統領の米国大統領初の広島訪問という、これ自体は非常に歓迎すべきことですが、そうした中で、やはり伝えられているように同日選もあり得るのではないかと私も思っており、民進党・野党としては常在戦場、当たり前のことでございますので、そういった準備はしっかりと整えているところです。