衆院予算委員会で4日午前、安倍内閣の基本姿勢に関する集中審議が開かれ、民進党の1番手として質問に立った階猛議員は、今回の台風10号により甚大な被害を受けた岩手県の代表として(1)被災地の視察のあり方(2)復興政務官の資質と任命責任(3)台風10号被災地への中小企業グループ補助金の適用(4)今次補正予算での制度融資の拡充が民間金融機関の経営を圧迫する可能性(5)災害時の避難を確実に行うための情報提供のあり方――について政府の見解をただした。
被災地の視察のあり方をめぐっては、務台内閣府政務官兼復興政務官が、台風10号に伴う豪雨被害の視察で9月1日に岩手県岩泉町を訪れた際、長靴を着用せず、同行した職員に背負われて水たまりを渡っていたことをあらためて指摘。被災地では怒りと不信の声が渦巻いていると述べ、政府調査団の団長として訪れた務台政務官の資質とともに安倍総理の任命責任をただした。
安倍総理は、務台政務官の被災地視察時の行動については「被災者の心情への配慮に欠けた不適切なもの。務台政務官も不適切だったと猛省している」と陳謝する一方、「総務省時代に防災対策に取り組んできた経験と知見を活かし緊張感を持って職務に当たってもらいたい」と述べ、資質には問題ないとの認識を示した。
階議員は、務台政務官に対して「被災地では風化が懸念されているなか、もっと危機感を持って震災の復興に誠心誠意当たられる方に担当を変えるべきではないか。被災地の心情に寄り添うのであれば任命責任をもう一度考えてもらいたい」と重ねてその資質を問題視。岩泉町の視察について、安倍総理が当初予定をしながら天候不順のため中止をして以後そのままになっていることにも触れ、「岩泉は東日本大震災の被災地でもあり、本州で一番広い町であり過疎地だ。台風の直撃により困難を極めている。岩手県のみならず全国津々浦々同じような状況があるなか、人口減少や高齢化、一人暮らしが多い土地でどのような防災体制をつくるか、災害が起こったときに復旧・復興をどう進めていくかという観点からも(総理の視察が)必要ではないか」と強く求めた。
そのうえで、岩手県では今回の台風10号により東日本大震災時以上に甚大な被害が出ている地域もあり、被災地からは東日本大震災のときに設けられた中小企業グループ補助金制度の適用を望む声があると紹介。この適用の可能性の有無を尋たところ、世耕経済産業大臣、安倍総理ともに「サプライチェーンが全国的にどの程度既存しているか、そのへんの被害の実態を踏まえて判断していきたい」などと答えるにとどまり、階議員は「制度の趣旨に関わらず、漁業者への補助へのバランスや地域経済への影響といった観点も踏まえて、幅広い視野から検討し適用してもらいたい」と要請した。
今回の補正予算で642億円が計上されている中小企業・小規模事業者への資金繰り支援のうち、特に517億円を日本政策金融公庫に出資して制度融資を約2.8兆円増やしていくという政府系金融機関の融資の増強について、民間機関に委ねるべきだと主張。「補正予算は緊急かつ必要な場合に措置するもの。せっかく517億円使うのであれば、中小企業のグループ補助金や今も避難生活を余儀なくされている多くの人々が住宅再建をする場合の後押しとなる被災者生活再建支援金の拡充にお金を振り向けた方がいいのではないか」と提案した。
災害時の避難を確実に行うための情報提供のあり方としては、予想降雨量ではなく予想浸水量を発表した方がいいのではないかと指摘。石井国土交通大臣は「従来から国が管理する河川については、洪水時に河川を管理する事務所から市町村長に対して、避難の判断を行うために重要な情報をホットラインで直接提供する取り組みを行っている。今回の水害を踏まえ、都道府県管理河川でも取り組みを加速化していきたい」などと応じ、より効果的な情報提供に向け前向きな姿勢を示した。