衆院TPP特別委員会で17日、TPP協定承認案や関連法案を議題に総括的集中質疑が行われ、民進党の3番手として質問に立った今井雅人議員は、(1)TPP協定承認案等に関する同委員会の自民党側理事の福井照衆院議員の「強行採決させる」発言や公明党幹事長の「10月いっぱいで衆院を通過させる」発言(2)SBS米の価格偽装に関する農林水産省の調査報告書――等の問題を取り上げ、安倍総理の認識をただした。
今井議員は冒頭、自民党の福井衆院議員が二階派総会で、TPP協定承認案等に関して、「(衆院TPP特別委員長だった)西川公也先生の思いを強行採決という形で実現するよう頑張らせていただく」などと発言し、その後、同特別委理事を辞任した件を「議員としてどういう資質か疑問に感じる」と述べ、十分な審議を行う姿勢がまったく見えない、国会軽視の愚行だと問題視した。安倍総理は「わが党の国対委員長から注意し、理事を辞職したと聞いている。円滑な委員会運営が可能となるようにわが党も努力していかないといけない」などと述べたが、「そもそもわが党は結党以来、強行採決しようと党として考えたことはない。円滑に議論し、議論が熟した際には採決をする。民主主義にのっとっていく」などと開き直った。
そうした答弁を踏まえて今井議員は「日程ありきで進めるのは、審議が熟したかどうかにかかわらず採決するということだ」と指摘し、公明党の井上幹事長が14日の定例記者会見で「10月いっぱいで衆院を通過させたい」と発言したことも問題視。さらに安倍総理が「限られた会期のなかで議論を深め、議論が熟された段階で採決するのは当然のこと。議論が熟してきた段階では採決いただきたいのが政府の立場」などと答弁したのに対し、今井議員は「会期が限られているのでそこで議論しなければいけないというのは間違っている」と指摘し、議論が熟さない場合は今国会だけでなく、次々に国会をまたいで何国会でも議論すればいいはずと反論した。「われわれは会期については合意しているが、この案件をこの国会でやるなどという合意はしていない」と述べ、過去最大級の国際協定で30章もの多岐にわたる内容であり、国民への理解が深まるまで断じて強行採決などしてはならないと特別委員会の委員長や政府にくぎを刺した。
今井議員は続いてSBS米の価格偽装に関する農林水産省の調査報告書に関して取り上げた。「内容もそうだが、今回のことは情報開示をしっかりするかどうかということだ」と指摘し、国民への情報開示が進まない、隠蔽が繰り返される実態に懸念を示した。そのうえで、この問題に関する新聞報道が9月14日になされ、民進党は23日に追及チームを設置して解明作業に着手し、早急な調査の実施を農林水産省に求め、調査が行われることになって以降は調査内容の開示を求めてきた経緯を説明した。
最初に示された資料は上記の通りで、だれがいつ作成したかも明記されていない「ある種人を馬鹿にしたような、到底役所の文書とは思えない、不誠実な」資料。引き続き開示を求め、第2弾、第3弾として示された資料(下記PDFダウンロード2・3枚目参照)も「金銭のやりとりの有無」「金銭の活用方法」「金銭のやりとりが生じた背景・目的」等の調査項目を示しただけで、「秘密にするほどのことか。それを出し渋るわけが理解できない」と今井議員は情報を出し渋る農水省の姿勢を厳しく批判し、農業関係者を中心に国民の間では「調査内容さえ小出しにしなければならない、他に隠さなければならない重大な問題があるのではないか」との見方が広がっていると指摘した。
今井議員はまた、「調整金」と言われる業者間の金銭のやりとりが国産米需給と価格に影響しなかったと調査結果を発表していることに関連して、業者からの聞き取りの際に農水省の担当者が書き取ったメモを農水省側は「公開文書に該当しない」としてかたくなに開示を拒んでいる現状では、調査結果を検証することはできないとの考えを示した。「調整金のやりとりが価格に影響したと答えた業者は1社もなかった」と山本農水大臣は答弁したが、今井議員は「販売価格に反映させたと報告したが調査結果に載っていない」と語る業者情報も一方にあるようだとの見方を示し、情報開示と徹底解明が不可欠だと強調した。