17日の衆院TPP特別委員会で民進党のトップバッターとして質問に立った近藤洋介議員は、政府が9月26日に公表したTPP協定及びその要約説明文書に過去に例のない多くの誤りがあった問題を取り上げた。「誤りは18カ所。異例の多さだ。内容を根本的に変えてしまうような決定的誤りが10カ所以上。政府がTPP協定を提出したのが3月8日で6カ月以上も放置して9月に出し直した。この事実に対して国民にきちんと謝罪すべきではないか」と岸田外務大臣の問題認識をただした。岸田外相は、「大変遺憾なことであり、国民におわび申し上げなければならない」と述べ、前例のない失態について国民に謝罪した。

 さらに近藤議員は、18カ所も間違っている協定を6カ月も放置し国会審議続けてきた政府与党のあり方について「これは結果的に国民を欺いていたことになる。非常に見逃せない、大きな問題だ」と指摘。安倍総理に対して「内閣の総責任者として、自ら反省して法案を出し直す。出し直しが本来の筋ではないか」と迫った。それに対して総理ではなく、岸田外相が答弁に立ち「外相に責任があり、再発防止に全力を尽くす」などと述べるにとどめた。

 TPP協定の内容に関連して近藤議員は、「日本にとってのTPPは、米国との交渉が肝だった思うが、日本の国益を守ることができたのか。取るものは取れたのか。わが国は何を主張してきたのか、きちんと検証することが極めて重要だ」と指摘。「交渉結果には大問題がある。完成自動車の対米輸出の関税を最長期間維持すると約束してしまった。自動車のみならず、コメ、豚、牛肉で譲ってしまった。これで米国から何を勝ち取ったかのか」と米国の要求を丸のみした安倍政権の交渉能力を痛烈に批判した。

 また、2013年12月に自公政権が軽自動車税を約30年ぶりに増税した背景には、TPPの日米2国間協議で米国から要求されたからではないかと石原内閣府特命相を追及した。石原大臣が「普通車と軽自動車の間の性能の差はほとんどない。そのような中、軽自動車メーカーと普通自動車メーカーとの間の関係を整理し増税を決めた。アメリカから要求があったことは知らない」などと述べた。その答弁に対して近藤議員は「うそを言ってはいけない。TPP交渉の2国間並行協議で米国からの声があったというのは周知の事実だ。自民党の税調幹部もそれを証言している」と指摘、不誠実な政府答弁をただした。

 さらにTPP交渉内容の大半が甘利前大臣とフロマン米通商代表との会談で決まっているにもかかわらず、内閣官房が正確な会談記録を保管していないと指摘し「これは困ったこと。全て甘利前大臣の頭の中。そして元TPP首席交渉官の鶴岡氏は英国大使となり日本にいない。このような異常事態の中で審議が行われている。書類を出せないなら答弁できる方が答弁の場に立つべきで、それが真摯(しんし)な政府の対応だ。甘利前大臣に出席を指導するのが(安倍)総理の役目だ」と求めた。それに対して総理は「公表しないことを前提に交渉している。やり取りを外に出さないのは当然だ」などと説明責任に消極的な姿勢を示した。

TPP協定の要約説明文書に過去に例のない多くの誤りがあった問題を追及する近藤洋介議員

TPP協定の要約説明文書に過去に例のない多くの誤りがあった問題を追及する近藤洋介議員