参院TPP特別委員会で9日、TPP承認案・関連法案に関する締めくくり総括質疑と討論・採決が行われ、民進党・新緑風会を代表して大野元裕議員が質問に立ち、(1)TPPが発効しない場合の総理の責任(2)米国がTPPから脱退した場合の政策大綱や関連予算の見直し等の問題を取り上げ、安倍総理らの見解をただした。討論には野田国義議員が立ってTPP協定の問題点を重ねて指摘、反対を表明したが、採決の結果、賛成多数で可決した(写真上は、質疑に立つ大野議員)。
大野議員は冒頭、質疑に入る前に会派の考え方を表明した。「本協定には問題が多く、国民の理解も得られていない中、米国次期大統領のTPP離脱表明もあり、本来であれば協定・法案ともに取り下げ、いったん立ち止まって、米国の説得をする等政府が責任を果たしてからあらためて国会に諮るべき」だと指摘。それにもかかわらず、TPP特別委員長の判断で本日、また数の力で採決を行おうとするのは、「遺憾を通り越してあきれかえるばかりだ」と政府与党の横暴な姿勢を痛烈に批判した。
米国がTPPから離脱すればTPP自体が無意味なものになると安倍総理が認めている問題に関連して「TPPが発効しないことになれば、国会でのTPP協定承認審議は無意味なものになり、国税に基づく資源も浪費される」と述べ、それに対して安倍総理がどう責任とるのかについて見解を求めた。安倍総理は「立ち止まって考えることはリスクがないように聞こえるが、現実的にはTPPの可能性を失わせ、その方が無責任だ」と述べ、自らの責任への言及を避けた。
続いて閣議決定したTPP政策大綱やTPP対策予算について「TPPが発効しないのに、TPP対策費として積んできたものが必要とは誰も納得しない」と指摘し、トランプ氏がTPP脱退を宣言した時点で「TPP政策大綱を取り下げ、未執行の予算を返納させ、TPPを見据えた農業の体質強化等の施策はゼロから見直すべきではないか」と追及した。これに対し安倍総理は「TPP発効にかかわらず、わが国にとって必要な政策であり、執行を停止することを想定していない」などと開き直った。
討論に立った野田国義議員は、輸出と投資の拡大により国富を増やし輸出・投資関連企業だけでなく、生活者や消費者に恵みをもたらすため、民進党は高いレベルの経済連携を積極的に進めるべきとの立場にあると説明。しかしTPPについては、農林水産業への深刻な影響、1割未満の輸入食品検査率に伴う食の安全問題、医療保険制度・薬価やISDS条項等にまつわる様々な問題点を取り上げ、反対する考えを表明した。最後に「強い者だけが生き残る社会を作るのではなく、『生活者』『納税者』『消費者』『働く者』の立場に立った政策を進めるべきだ」と表明し、討論を締めくくった。