参院予算委員会で6日、財政・内外諸情勢に関する集中審議が行われ、民進党・新緑風会の2番手として質問に立った蓮舫代表は、分散型エネルギー社会の推進こそ地域雇用と経済成長を実現できると安倍総理らにアベノミクスからの転換を説いた。森友学園への国有地払下げ問題、原子力エネルギー政策のあり方等もただした。
蓮舫代表は、森林が市面積の8割を占め、バイオマスタウン構想を進める岡山県真庭市での取り組みを全国規模で展開すべきではないかと提案した。「真庭市は2013年に新庁舎を建てた際、それまでの化石燃料に代えて真庭市産の木材を燃やすボイラーを設置。以前の庁舎は平日17時以降や土日、冬季は寒くて暗かったが、1年中快適な温度で明るくなり、電気代も3分の2にコストダウンできた」と紹介。
さらにバイオマスで市全域に電気を供給している真庭バイオマス発電所は、地域燃料を利用し1万キロワット(一般家庭の2万2千世帯の電気量)を発電、余った電気を売電し、初年度に3億円の収入を得たと説明。政府が2兆円の予算を計上している地方創生の関連事業について「このような地域分散型のエネルギーや再エネ・省エネを全国で展開する方が地域の雇用につながり、経済成長に資する。これで成長戦略を作り、思いきり財政出動すれば地方創生を実現できる」と提案した。
また、国際再生可能エネルギー機関が昨年、再生可能エネルギーで経済成長できると発表した内容を取り上げ、「2010年の世界の最終エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合は18%で、そのまま続けると2030年に21%にしかならないが、それを2倍の36%まで増やすと、世界で150兆円の経済効果、2440万人の雇用創出効果、日本ではGDPを最大で3.6%押し上げる」との試算を紹介。「このような再生可能エネルギーや省エネルギー分野に限って、設備の建て替えや新規設備投資を国が支援すれば確実に雇用と経済効果を生み出す」と提案し、安倍総理らの認識をただした。
安倍総理は「さまざまな成長分野に財政出動を重点化することには賛成だ。ただ、再生可能エネルギーも重要な分野だと思うが、風力発電では各地で反対運動も起こっている」等と慎重な姿勢を示した。世耕経産大臣は「私も再生可能エネルギーは重要だと思う。エネルギー特別会計で再生可能エネルギーを地方で推進するための予算を手厚く付けている。再生可能エネルギーを含めてバランスのあるエネルギー政策を推進していく」等と語った。
こうした政府側の答弁に対して蓮舫代表は、「検討しているだけでは動かない。民進党はこの国を再エネ、省エネ立国にしていきたい。そのため分散型エネルギー社会推進4法案(分散型エネルギー利用促進法案、熱エネルギー利用促進法案、公共施設省エネ再エネ義務化法案、エネルギー協同組合法案)を国会に提出した。3.11での失敗を二度と国民に味合わせたくないという思いで提案している」と説明、国会での審議を求めた。
分散型エネルギー利用促進法案は、東日本大震災・福島第1原発事故の教訓として、原子力依存度を可能な限り低減、大規模集中型中心のエネルギー施策からの脱却を目指し、地域エネルギー源を効果的・効率的に活用してエネルギーの地産地消・分散型エネルギー利用を推進するもの。
国が分散型エネルギー利用促進基本方針を策定し、地方自治体がそれに基づく分散型エネルギー利用促進計画を策定、国から自治体への交付金により自治体が主体的に分散型エネルギー利用を促進することができるようになる。これにより地域の資源や人材を活用し、それによる利益を地域に還元することで、雇用機会の創出、地域経済の活性化による自立的で個性豊かな地域社会の形成を目指す。