参院本会議で17日、政府提出の「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」が審議入りした。
同法案は、地域包括ケアシステムを強化するため、(1)市町村介護保険事業計画の記載事項への被保険者の地域における自立した日常生活の支援等に関する施策等の追加(2)当該施策の実施に関する都道府県及び国による支援の強化(3)長期療養が必要な要介護者に対して医療及び介護を一体的に提供する介護医療院の創設(4)一定以上の所得を有する要介護被保険者等の保険給付に係る利用者負担の見直し(5)被用者保険等保険者に係る介護給付費・地域支援事業支援納付金の額の算定に係る総報酬割の導入等――の措置を講ずるとしている。
質問に立った牧山ひろえ議員は、(1)利用者負担の見直しに伴う影響調査(2)介護人材不足への対策(3)軽度者向けの介護サービス(4)保険者機能の強化(5)「総報酬割」(報酬額に比例した負担)の導入――等について取り上げ、政府の見解をただした。
また、本法案が介護保険法を中心に、本来は別々に提出されて審議されるべき盛りだくさんの31本もの法案が一括されて国会に提出されていること、その具体的な中身については政令や省令に委ねられている部分が220カ所以上に及び、法案だけでは内容が明確に把握できないことを問題視。新たな介護保険施設として創設されることになっている「介護医療院」を例に挙げ、「具体的な介護報酬、基準、転換支援策等については、その多くが法案に定められていない。法案の賛否を判断するのに必要な要素は、最低でも法案内に定めておくべきだ」と求めた。
2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3割とする今回の利用者の負担の見直しに当たっては、衆院の審議で、2割負担導入によって負担が2割に上がった人のうち約16万7千人がサービスの利用回数を前月より減らし、1634人は介護保険施設を退所したことが明らかになっていることに言及。「3割負担の導入を提案する前に、2割負担導入に伴う利用者への影響について調査や分析を行うべきだ。3割負担の導入による財政効果はどの程度あるのか」と迫った。
塩崎厚生労働大臣は、「2015年8月の2割負担の導入前後でサービスの受給者数の伸び率や、1割負担者と2割負担者の間のサービス利用回数などの傾向に顕著な差は見られない」と強弁。「多角的な分析ができるよう調査のあり方について検討していく」「3割負担の財政影響については、18年度予算の編成過程で精査されるが、現時点の粗い見積もりでは例年度の介護給付費ベースで概ね1千億円程度の影響と考えている」と答えた。
介護人材の確保と処遇改善をめぐっては、2017年度の臨時の介護報酬改定による介護職員処遇改善加算の見直しは、その恩恵が介護に直接従事する方のみに限定されているとして、「加算の対象外となっている職員への処遇改善は、実質的に介護事業者の持ち出しとなり、15年度の介護報酬の引き下げ改定以降、厳しい経営状況となっている介護事業者に追い打ちをかける結果となっている」と批判。「介護事業者の経営の安定を図るとともに、介護人材の確保をさらに進めるため、18年度介護報酬改定は、引き上げ改定とする必要がある」と説いた。
今回議論が先送りされた軽度者向けの介護サービスについては、今年度予算の編成過程で、訪問介護を行う場合の人員基準の緩和や、通所介護等の給付の適正化について、18年度の介護報酬改定で給付の見直しを検討することが確認されていることから、「安倍内閣が『給付の適正化』の名の下に、軽度者への介護給付を削減していく方針であることは明らかではないか」「軽度者向けサービスの抑制は、軽度者の介護度を重度化させ、介護保険サービスの利用が増大することになりかねない。その結果、介護に関する財政負担の増大を招きかねない」と指摘。今後、軽度者の介護サービスを地域支援事業に移行する場合には、いわゆる「要支援切り」による利用者への影響について調査、分析を行うべきだと求めた。
牧山議員は最後に、「介護保険制度のみが持続可能となっても、介護サービスを利用する要介護者やその家族が必要なサービスを利用できなくなるような改正、『保険あって介護なし』の状態の深刻化は絶対に避けなければならない。民進党は、介護サービスの利用者目線に立ち、介護サービスを提供する介護事業者にも寄り添いながら、介護保険制度の持続可能性を高めていくための方策を提案していく」と誓った。