参院本会議で18日、政府提出の「生産性向上特別措置法案」と「産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」に対する質疑が行われ、民進党・新緑風会の浜野喜史議員が関係閣僚に質問した。

 生産性向上特別措置法案は、わが国産業の生産性を短期間に向上させるために必要な支援措置を講じるというもの。産業競争力強化法等の一部を改正する法律案は、わが国経済の成長軌道を確かなものとし、産業の発展を持続させるべく、企業の経営基盤を強化するために必要な措置を講じようとするもの。

 浜野議員は、生産性向上特別措置法案については、(1)生産性の向上とは何か(2)基礎教育の重要性(3)規制のサンドボックス(4)革新的事業活動評価委員会(5)コネクテッド・インダストリー(6)中小企業の抱える問題点(7)中小企業の設備投資促進のための税の減免――等について、産業競争力強化法等の一部を改正する法律案については、事業承継・再編に際しての労働者の保護などについて質問した。

 浜野議員は冒頭、森友学園問題の公文書改ざんと不当値引き疑惑、加計学園問題のお友だち優遇疑惑、イラク日報のずさんな文書管理、そして、それらに関わる虚偽答弁によるごまかし疑惑などを取り上げ、「国民は政府・行政は一体どうなっているのかとあきれかえっている」と断じ、少なくとも内閣総辞職、さらには総選挙のやり直しで国民の審判を仰ぐしかないと批判した。

 生産性の向上について、「生産性革命といえば聞こえはいいが、法案のどこを見ても『生産性とは何か』という根本的な規定がない」「生産性とは、公共インフラや民間資本といったハード面だけでなく、社会制度や文化、人的能力といったソフト面にも大きく依存するもの」と指摘し、基本的な見解を求めた。世耕弘成経産大臣は、「事業活動による付加価値を高め、新たな技術を活用したイノベーションを促していくことが必要。実行計画を策定し毎年各施策の実施効果を評価し、必要な軌道修正を行う仕組みを構築する」と答えた。

 新しい技術やビジネスモデルについて、より合理的な規制手法の在り方をスピーディーに検証・追求するプロセスとして導入しようとする「規制のサンドボックス」制度については、「法案の目玉であろうが今一つ理解できない。従来の国家戦略特区や新事業特例制度、グレーゾーン解消制度との違いが明確でない」などとして説明を求めた。世耕経産大臣はそれぞれの制度や特区について、時間がかかりすぎるなどの問題点をあげたうえで、「期間や参加者等を限定し、実証と整理することで規制が適用されない環境下で法令改正を待たず、スピーディーに実証プロジェクトを実施可能とした」と述べた。

 わが国全体の生産性向上のためには、中小企業の底上げが必要であることから、浜野議員は「中小企業の生産性が大企業と比較して低い理由」を質問した。世耕経産大臣は、「従業員1人当たりの資本ストックが低いことや、労働集約的産業の割合が高いこともある」と指摘したうえで、「自治体の判断で固定資産税をゼロにする制度や、ITベンダーなどの認定制度を新たに導入することとしている。法律、予算、税制など、あらゆるツールを総動員して生産性向上を支援していく」と答えた。

 産業競争力強化法等の一部を改正する法律案については、「事業承継のための事業再編時に、自らの雇用環境や労働条件にどのような変更が生じるのかも大きな問題」と指摘し、「労働者保護の観点から、事業再編時における労働契約の承継、労働者・労働組合等との事前協議、労働条件の不利益な変更の制限など、かねてより求められている法整備も含めた検討が必要だ」と浜野議員は訴えた。加藤勝信厚生労働大臣は、「事業譲渡において労働契約を承継する場合は、労働者の同意が必要であり、労働者の意思に反した労働契約の承継は認められていない」などと述べた上で、「2016年策定の、事業譲渡・合併を行うにあたって会社等が留意すべき事項に関する指針に沿った対応がなされるよう周知に努めていく」と答えた。