穀類加工技術で世界のトップを走る食品加工機総合メーカー株式会社サタケ。同時に「人を幸せにする」取り組みでも時代のトップを走っている。その着実な実践を紹介する。
地域の経済、産業を支え、人を育て、未来をつくろうとしている人々が全国にいる。広島県で精米機械などを製造する株式会社サタケもその一つだ。
創業121年という歴史を持つサタケは、1896年に日本初の動力式精米機を開発した食品加工機器のパイオニア。人類の3大穀物である「米・麦・とうもろこし」を通して「食」で世界に貢献できる会社を目指し、食品全般に関わる加工機械や食品の製造販売を行っている。中でも中核は米の加工で、精米の全行程で使用される機械・設備を自社の製品で賄うことができ、国内はもとより、約150カ国に提供している。大型精米プラントでは90%以上のシェアを占める。
人を幸せにするにはまず社員の幸せから
取材に応じていただいた木谷博郁(きだに・ひろふみ)氏(取締役・人事部長)に、世界のトップを走り続ける秘密を伺うと、その根底にはある経営方針があるという。
「動力式精米機が生まれたのは、初代佐竹利市の、酒蔵の過酷な精米作業を何とかしようという思いからでした。酒蔵の町西条だから生まれた技術であり、サタケの技術で酒蔵も進化した。以来サタケと西条はともに成長してきたと言えます。私たちのさまざまな技術や製品、経営施策も、初代から受け継ぐ精神『会社を取り巻くすべての人を幸せにする』に基づいているのです。人を幸せにするには、まず自分たちが幸せである必要があります。だから経営陣の役割は、まず社員を幸せにすること。ワークライフバランスに配慮すること。そのために、東広島地域では最も早く社内保育室を設置しました」
「利益が出た場合の社員への還元として、入社後、3年・5年経過した社員に奨学金返済を支援する『奨学金返済支援制度』なども採用しています。また、有期雇用社員の正社員化、孫育てに参加する社員を支援する『イクじい・イクばあ休暇』など、社員に喜んでもらえる施策に少しずつ取り組んできました」
しかし、これらの取り組みにはそれなりの原資がかかる。木谷取締役はどう考えているのだろうか。
「例えば、保育室には管理職の給与1年分ぐらいがかかります。つまり課長1人雇うのと同じ投資で、社員が安心して働けるということなのです」
ではその成果はどのように計ることができるのだろうか?
「ワークライフバランスによる成果を、数字で示すことはできません。しかし、全社員が、会社を良くしていこうという思いで仕事ができることが大切だと思います」
つながりある地域での再生と活性化を目指す
日本国内での米の消費量の減少、少子高齢化という地域が直面する現状に対しても、積極的に対応策をもって取り組むサタケ。その点について木谷取締役がこう話す。
「日本の米の消費量は、50年前と比べて半減する勢い。こんな状況で生き残るには、海外展開が不可欠です。また、国内では生産、加工、流通、販売を一貫して行う農業6次産業化を支援しています。その試みの一つが、独自技術で開発したGABA(ギャバ)ライス(玄米に含まれる天然の栄養成分GABAを豊富に含むお米)。サタケの食品事業の一つです。地元のお米を使ったGABAライスはご好評いただいており、さらに開発を進めていきます」
そのGABAライスの生産工場がある東広島市豊栄町を舞台に、産官学民連携で進める「豊栄(とよさか)プロジェクト」をサタケは進めている。
「豊栄プロジェクトは、地域の再生・活性化事業です。豊栄地域の高齢化・過疎化は著しく、この10年で人口が20%減少し、非常に厳しい現実があります。また豊栄にはグループ会社の佐竹鉄工もあり、サタケグループの人間がたくさん住んでいる。豊栄からサタケに通っている人も多い。もともと人のつながりがある土地で、住人や関係者すべてを幸せにしたい。これがプロジェクトの目的です。コンセプトは『くらす=暮らす=クラス』。具体的には、人口増加、持続的1次産業の実現、経済活性化による雇用創出などを目標とした取り組みを計画中です」
「まだ始まったばかりで、その成果は見通せません。しかし、私たちの地道な挑戦が、地域を変えていく力となるよう試行錯誤しています」
キーワードは「少しずつ」
サタケは、20年以上前から、今でいう「働き方改革」を実践してきた。ようやく世の中が追いついてきたとも言える。
木谷取締役の話に、恵飛須圭二(えびす・けいじ)・党広島県第4区総支部長も共感を示す。
「いっぺんに成果を出そうとすると失敗する。社員と地域の幸せのために、会社と社員が協力して、少しずつ着実に実践する。サタケさんの経営には、しっかりとした軸を感じました。何よりも、その軸がぶれることなく実践されているところが素晴らしい。地元にこんな企業が存在するのは、誇らしいことです」
地元に根付き、地元から生まれた技術でグローバルに勝負する。その根底には「幸せ」基点の地域経済再生のカタチがあった。
(民進プレス改題26号 2017年6月16日号より)