29日に開かれた参院予算委員会の総括質疑で、民進党・新緑風会の2番手として質疑に立った増子輝彦幹事長は、(1)安倍総理の政治姿勢(2)外交問題(3)大相撲の問題(4)福島の復興・再生――について質問した。
増子幹事長は質問の冒頭、北朝鮮による弾道ミサイルの発射について、「この弾道ミサイルの発射は断じて容認できない」と断じた上で、「民進党としても厳重に抗議をした。政府としても備えや対策をしてきたと思う。このことについては与野党の壁は全くないので、私たちもできるだけ皆さんと一緒に協力していく」などと表明した。
安倍総理の政治姿勢に関しては、国会での与野党の質問時間の配分、内閣参与に新たに任命した人物を取り上げ、「与野党の質問時間の配分について安倍総理は、『国会が自主的に決めること』などと言っているが、安倍総理は自民党の総裁でもあるので是正する必要がある。指導力を発揮すべきだ。内閣参与の任命については、お友達人事のようなにおいがする。慎重に行うべきだ」などと指摘した。
外交問題、特に対北朝鮮政策については、「圧力と制裁は必要なことだが、それだけでいいのかを考えていくべき。現在北朝鮮の貿易の9割は中国と行っている。北朝鮮の脅威を取り除くためには中国の影響力が極めて重要になってくる。中国に対して働きかけや強く申し入れなどを行ったのか」と質問した。これに対し安倍総理は、「首脳間のやり取りであり、すべてをつまびらかにすることはできないが、中国は北朝鮮に対して圧倒的な影響力がある。そうした点についても(中国に対して)指摘はさせていただいた。突っ込んだやり取りもした。制裁決議には中国も賛成しているので、中国がしっかりと制裁を履行していくことが重要だ」との認識を示した。
拉致問題を取り上げた増子幹事長は、「安倍総理は再登板した2012年12月28日、拉致被害者家族会と面会した時に、必ず安倍内閣で解決すると明言した。それから最優先課題で取り組むと言い続けてきたが、残念ながらこの5年間、1ミリも前に動いていない。この5年間、対北朝鮮に拉致問題でどのような具体的対応をしてきたのか聞きたい」と迫った。安倍総理は、「残念がらこの5年間で、ただ一人の拉致被害者の生還も達成できないことは痛恨の極み。今後とも安倍内閣で拉致問題を解決するとの決意のもと全力で取り組んでいきたい。同時に、核・ミサイル問題に拉致問題が埋没してはならない。国際社会に常に訴え説明して多くの国から理解を得ている」などと答えた。増子幹事長は、「私たちも努力は認めているがなかなか動かない。北朝鮮とのパイプも作っていると思うが、この問題は政府だけの問題ではなく国を挙げての課題だ。圧力と制裁だけではない形で、超党派の訪朝団の編成も一つの手段かもしれない。オールジャパンでやらなければいけないこと。われわれも協力していく」と表明した。
福島県の復興・再生については、「福島県の復興なくして日本の再生はない。これは民主党政権時代から言われてきた心構えであり姿勢だ」と述べた上で、原発災害に苦しむ福島県の現状認識について安倍総理に質問した。安倍総理は、「東日本大震災、原子力災害からの復興は最重要課題だ。これまで福島の復興・再生に全力で取り組んできた。福島の復興なくして日本の再生なしの考えの下しっかりと取り組む」と答えた。
増子幹事長は、「福島第1原発の現状が極めて厳しい。汚染水処理ができない。2年前に比べ汚染水は増え続けている。特に多核種除去設備でも取り出せない核物質トリチウムをどのように処理するかが汚染水処理の最大の課題だ」と指摘し、どのように処理していくのかと質問した。東京電力ホールディングスの小早川社長は、「科学的安全面だけではなく、福島の皆さんの安心、復興推進との両立に十分配慮する必要があると考えている。国や関係者と検討を進めている」と答えるにとどまった。「汚染水を海洋放出したいと考えているのか」との増子幹事長の重ねての質問に小早川社長は、「会社としての方針は固まっていない」と答え、世耕経産大臣は、「原子力災害対策本部の下に汚染水処理対策委員会があり、その下に処理水取り扱いに関する小委員会がある。現在はそこで総合的に検討を進めている。その結論を待って東京電力に判断させていく」と述べた。増子幹事長は、「汚染水処理は極めて重要な福島復興の課題だ。東京電力とよく連携をとって進めてほしい」と要望した。