参院本会議で14日、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆるカジノ法案)の採決が行われ、与党の賛成多数で可決した。
採決に先立ち法案に反対の立場から討論に立った神本美恵子議員は、今回の同法案の拙速な審議に対し、立法府としての重大な懸念を表明。「依然として国民の多くが憂慮し、参院の審議を通じてますます不安が高まっている問題だらけの法案の成立をなぜこんなに急ぐのか。参院での参考人質疑も含めた審議で新たに明らかになった問題点、本当に経済効果があるのか、地域振興というが、地域が疲弊し治安の悪化や青少年への影響から人口減少が起きている事例、そして何よりも各会派からギャンブル依存症がこれ以上拡大することへの懸念などが出されたにもかかわらず、答弁のほとんどが『それは実施法で政府が考える』という、おざなりな審議で不十分と言わざるを得ないものだった。とにかく成立させてしまおうというやり方は、立法府に集う者として大いに恥ずべきところであり、国民の負託を受けている立法府としての責任を果たせないままになっていくのではないかという懸念を持たざるを得ない」と指弾した。
法案の問題点としては、(1)刑法で禁止してきた賭博罪という「規制」を解除して、海外からカジノ資本を呼び込み、民間の賭博場を作り、経済を活性化させようとするものであること(2)プログラム法であることから、国民が不安に思っている民営賭博の解禁やカジノ解禁による負の影響、マネーロンダリング対策、ギャンブル依存症対策などについては、「それは政府が検討する」「これから考える」と、「丸投げ法案」となっていること――等を列挙。厚生労働省研究班の2013年調査によると、日本ではギャンブル依存症患者は536万人、ギャンブル障害有病率は4.8%(男性8.7%、女性1.8%)と、欧米の1%未満、アジアの1~2%に比べ異常に高いことなどにも触れ、「カジノ解禁とは、日本社会がモラルある経済への道を捨てて、金儲けを何よりも優先する社会へと歩を進め、変貌していくことに他ならない。良識ある、そして未来への責任を果たすべく努力されているすべての参院議員の皆さん、ここで、一旦立ち止まろう。本法案は廃案とし、人々が、家族が、ギャンブル依存症におびえることなく、安心して暮らしていくためにギャンブル依存症対策をこそ議論すべきだ」と呼びかけ、討論を締めくくった。