衆院本会議で9日、「独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律案」の趣旨説明・質疑が行われ、民進党・無所属クラブの菊田真紀子議員が質問に立った。

 同法案は給付型奨学金制度を創設するための政府提出法案。

 菊田議員は冒頭、「今国会ほど、文部科学省に対して国民の大きな注目と関心が集まり、連日、松野大臣が弁明に追われる国会は珍しい」と文部科学省OBによる天下りの問題に言及。「当時の事務次官の辞任が、まるで国会の開会日に合わせたかのように早々と閣議決定されたが、それで幕引きとはならない。次から次へと新たな国家公務員法違反が判明するなど、いまだに真相は闇の中。今月末には、文科省による調査の結果が公表されると聞いているが、嘘をついたり、隠ぺいしたりすることは決して許されない」と指摘。松野大臣に国民が納得のいく説明責任を果たし、信頼を回復するために全力で取り組むよう強く求めた。

 続いて学校法人森友学園をめぐる問題についても取り上げ、「一連の疑惑を解明するためには、当事者である籠池理事長の参考人招致が必要不可欠だ」と述べ、「民間人だから」「事件性がない」などと説得力のない言い訳を並び立てて与党が参考人招致を拒否している点を「まさに疑惑隠しとしか言いようがない。政府としても総理大臣夫人が巻き込まれるという前代未聞の疑惑であることから、国会が決めることなどとして傍観するのではなく、積極的に籠池理事長の参考人招致に協力すべきだ」と断じ、菅官房長官に対応を求めたが、菅官房長官は「国会が決めること」とする旨の従来の答弁を繰り返した。

 法案に関連しては、日本の奨学金について「奨学金というと聞こえはいいが、残念ながらわが国の奨学金制度は貸与型のみであり、実質的な教育ローンとなっている」と指摘。奨学生の1人当たりの平均貸与総額が第1種奨学金で236万円、第2種奨学金で343万円となっていることを「卒業と同時に多額の借金を抱えることになり、正社員で働きたくても働けない等、安定した雇用に就くのが難しくなっている今日の社会情勢のなかで返済に苦しむ人が多い」と問題視。そのうえで、「教育は親や家族、個人の責任であるという考え方に立ち、長らく教育分野への国による大きな投資を怠ってきた安倍総理・自民党が、今回、大きな世論の後押しもあり、給付型奨学金の創設へと踏み出したことは評価したい」との認識を示す一方で、2017年度からの一部先行実施で対象となる学生は全国で約2800人、本格実施の18年度以降は1学年あたり約2万人を想定している点について「本法案の内容を見ると、支給対象者や支給額があまりに少なく絞り込まれており、『スズメの涙』ではないかと、本当に涙が出そうになる」「このような限定的な規模で、本法案の趣旨である教育の機会均等が図られるのか甚だ疑問」だとした。

 今回の改正で、来年度は2万円から4万円を住民税非課税世帯と児童養護施設の子どもに支給するとしている点についても、「学生生活調査によれば、学生が毎月必要とする追加必要額は3万円から5万円程度と試算されているが、それとて家庭からの支援やアルバイトなどの収入を含めてなお不足している金額で、今回の支給額で十分だとは言えない」と指摘した。

 菊田議員はまた、住民税非課税世帯から大学等に進学する人数は6万人と推計されるが、本格実施となる18年以降も給付型奨学金の対象人数は1学年あたり約2万人で全体の3分の1にすぎない点を取り上げ、「同じ境遇にあっても奨学金を受給できる学生と、受給できない学生にわかれてしまう」と問題視した。

 財源について、文科省から厚生労働省の重複施策の縮減など既定経費の見直しで約80億円、教育・研究職返還免除枠の規模の精査で約30億円、そのほか奨学金制度全体の見直しを行うとの回答があった点に触れ、これで本当に安定的に継続できるか疑問だとして、財務大臣に財源の中身をただした。麻生財務大臣は「これらの財源はいずれも制度的な見直しに伴う恒久的なものであり、将来にわたり安定的に確保される」などと説明した。

 菊田議員は「そもそも、日本は高等教育に対する国としての財政的支援がOECD諸国と比べて最低レベル。諸外国の状況を見ると、給付型の奨学金制度や学生への財政支援の仕組みが充実しており、学び続けたい学生に手厚い環境が与えられている」として、今後、諸外国に比較しても恥ずかしくない教育への公的支援を増やしていくことの重要性を問題提起。「私たち民進党は、教育の無償化を目指し、法案化も検討している。一人ひとりが個性を生かし、その能力を伸ばしていけるよう、『人への投資』を最優先で実現していくという考えのもと、就学前から高等教育までの各教育段階における授業料の無償化の推進、授業料以外の学校給食や学用品などの就学に要する負担の軽減等の政策を提案していく」「今こそ米百俵の精神で、教育に思い切った投資をし、子どもたちの未来が明るい夢と希望に輝くよう、われわれ民進党はあらゆる努力をしていく」と表明した。

PDF「衆院本会議 菊田真紀子議員最終稿」衆院本会議菊田真紀子議員最終稿

「独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律案」の質問に立った菊田真紀子議員

「独立行政法人日本学生支援機構法の一部を改正する法律案」の質問に立った菊田真紀子議員