参院予算委員会で23日午前、学校法人「森友学園」理事長の籠池泰典氏の証人喚問が行われ、民進党・新緑風会を代表して福山哲郎議員が質問に立った。

 森友学園をめぐっては、(1)学園に評価額より約8億円も値引きされて国有地が払い下げられた経緯や、政治家の関与(2)学園の小学校の認可の経緯(3)安倍総理の昭恵夫人を通じて渡したとされる100万円の寄付金(4)金額が異なる3つの工事契約書――等が焦点となっている。

 籠池氏は、2015年9月、安倍昭恵総理夫人から「安倍晋三からです」と、封筒に入った100万円の寄付を受け取ったと証言。国有地の取得に関しては、「昭恵夫人に助けをいただこうと思い、おととし10月、昭恵夫人の携帯に電話した。留守番電話だったのでメッセージを残した。後日、内閣総理大臣夫人付きスタッフから連絡をいただき、『なかなか難しい』との返事をいただいた」、小学校の認可の手続きをめぐっては、「小学校の設立に関する大阪府への申請では、亡くなった大阪府議会議長を務めた畠成章先生に、大阪府の松井知事や府に力添えをいただけるようお願いしていた。そのおかげで、大阪府の当時の総務部長などにも説明をさせていただき、小学校設置の認可申請では特別な取り計らいをいただいたと感謝している」などと述べた。

 証人喚問は、憲法62条により国会の各議院に与えられた権限で、議院証言法に基づき、証人は虚偽の証言をした場合、3カ月以上10年以下の懲役が科される。

 福山議員は冒頭、籠池氏を含め国有地売却の責任者だった当時の財務省・迫田前理財局長など関係者の参考人招致を求めていた立場から、「籠池証人1人の証人喚問では全容解明には結びつきにくい。他の当時者の参考人招致を拒否し続けてきた与党に強く抗議する」と与党の姿勢をあらためて批判。そのうえで籠池氏の証言内容をただした。

籠池泰典氏

籠池泰典氏

 籠池氏は、15年10月の国有地取得をめぐる昭恵夫人とのやりとりについて「ちょうど買い受け特約付きの定期借地契約した頃だったので、10年の買い受け特約について、介護施設に付く50年の特約を学校法人ではどうなのかとお聞き、お願いしたところ、『今のところ学校法人は無理だ』ということだった」と証言、夫人付きスタッフからの回答についてはファックスが残っていると話した。福山議員は、当時小学校の名誉校長だった安倍昭恵総理夫人の担当スタッフが関係者に問い合わせした形跡があったことを確認すると、「もしこの時期に当時小学校の名誉校長である総理大臣夫人の担当スタッフが各役所に問い合せをしていたとしたら、非常に大きなこと。ある種忖度(そんたく)が働いても仕方のない状況もあるのかな」と述べ、ファックスの後日提出を求めた。

 昭恵夫人を通じて渡されたとされる100万円の寄付金や、昭恵夫人の講演に対して学園側が支払ったという10万円の講演料については総理官邸側と学園側の話が食い違うことから、福山議員は「私は事実が分からない」としたうえで、「なぜ今になって公にされたのか」と質問。籠池氏は、「保守の人間で当初から安倍先生に敬愛以上の思いがあった。ところが(問題発覚後の)2月23日の国会審議で安倍総理から『しつこい人だ』と言われた。ご助力いただいていると認識していたが、手のひらを返すように学校潰しになってきた。どないなっているのか、解明しないと国民の皆さんにも申し訳ない、不可思議な力が動いているのかなと思った」などと証言した。

 昭恵夫人から籠池夫人に対し、『私が関わったということは、裏で何かがあると疑われないように』という口止めとも取れるメールが届いた」との証言の時期などを確認すると、「だいたい2月18日以降25日くらいまでの間だと思う」、籠池氏の夫人と昭恵夫人とのメールのやりとりについては「2月中は22回、3月は15、16回はさせていただいていたと思う」と証言し、問題発覚後も頻繁にやりとりが行われていたことが明らかになった。

 元大阪府議会議員の畠氏の関与については、籠池氏は「非常に熱心に動いていただいた」「大阪府の幹部の役員への働きかけや松井知事に働きかけをしてくれたと記憶している」と証言。小学校の設置申請をする前に近畿財務局や大阪府の審議会とやりとりがあったことや、問題発覚後も近畿財務局とやりとりがあったこと、財務省の佐川理財局長の命として、部下から酒井顧問弁護士を通じて『10日間隠れていて』と言われたこともあらためて証言した。

 稲田防衛大臣との関係については、直接相談したことはないものの、「今回の土地の事柄についても(大臣の夫である)稲田龍二事務所に16年1月には相談に行っている」と証言した。

参院予算委員会での証人喚問