民進党代表の蓮舫です。
まずは、連合の神津里季生会長、慶應大学の井手英策先生、NPO法人キッズドアの渡辺由美子理事長、駐日アイルランド大使のアン・バリントン閣下、すばらしい挨拶をありがとうございました。真っすぐで率直な言葉が本当に胸に響きました。我々が担わなければいけない責務をあらためて教えていただきました。お忙しい中、本当にありがとうございます。
また、本日の定期大会には全国から多くの仲間が参集してくださいました。昨年の秋に代表就任以来、国会はもとより全国各地で私は皆さんに支えられて今に至っています。あらためて仲間にも心からお礼を申し上げます。ありがとうございます。
◆未来への責任
さて、民進党の第1回目の定期大会は、私たちがこれから1年間の活動をしっかり歩んでいくための思いを共有する大会にしたいと思います。
今、私たちは大きな時代の転換期にいます。それは政治の転換期でもあります。今から100年前の1918年、大正デモクラシーの大きな流れの中で、藩閥体制ではない本格的な最初の政党内閣が生まれました。その後、政党政治の発展とともに、国民の声に応えた普通選挙が実現され、かなり遅れてではありますが、女性にも参政権が付与されました。民主主義の実現を求める先人たちの、想像を超える努力のおかげで、今日、男でも女でも「政治家を選択する自由」が保障されるようになりました。こうして私たちの民主主義は一歩一歩、前に進んできた。
それでもまだ成熟はしていません。なぜならば、国民が、国のあり方を、政策を、自分たちの未来を決めることができる二大政党制は未完成だからです。
時代の転換期にあり、将来が見通せない中で、一方的に「この道しかない」とひとりよがりの未来を押しつけられることに、多くの人々が不安を覚えています。だからこそ、私たちは国民にもう一つの選択肢を示す政党であるということを堂々とこの1年、皆さんとともに国民に伝えていきたいと思います。
私たち民進党は国民の選択肢になる。国民が選択する政策を示す。国民が選ぶ政治の形をしっかりと実現することができると、あらためてきょうは確認をさせてください。
1900年頃から100年かけて増えてきた日本の人口は、これから100年かけてもとの水準へ戻っていきます。かつて経験したことのない速い時間軸で進む人口減少、そして超高齢化の時代に向けて、私たちはどんな未来をつくっていくことができるのでしょうか。
次世代に残すのは負担や負債ではなく、夢や可能性です。全ての子どもの学びを保障する教育無償化、3.11を乗り越えるエネルギー改革、原発ゼロ社会の構築。私たちが掲げる未来には可能性を感じてほしいと強く願います。
今後この国が厳しい現実と向き合うことから逃れることができないのであれば、厳しい現実を越えてなお未来を描ける、新たな可能性を感じることのできる未来予想図を、次の世代に手渡していきたいと考えています。それはしがらみのない民進党にしかできないとも強く確信しています。教育やエネルギーなど国のあり方について、国民に夢と可能性のあるもう一つの選択肢をしっかりと示していくことが、私たちの掲げる「未来への責任」です。
◆エネルギー政策
岡山県の真庭市に行きました。市の8割が森林という地域特性を生かし、市はバイオマスタウン構想を官民一体で進め、2013年に建てかえた新市庁舎は真庭産の木材を使ったボイラーをつくり、一年中、昼も夜も、そして週末も、快適な室温を維持することができ、電気料金はかつての3分の2まで安くなりました。また、市や地元企業が出資して真庭バイオマス発電株式会社を設立し、市内一般世帯1万7,000を上回る2万2,000世帯分の電力をつくり、23億円の収入が見込まれ、会社は黒字となっています。何より、それまで処分費用がかかった木くずや間伐材が燃料として市民の収入となったこと。関連産業で雇用が生まれ、地元の電気会社に電気料が払われることで、地域のお金が地域内で循環する仕組みが生まれました。自然エネルギーを基点に、地方が豊かになる新しい経済システムが回り出しました。
こうしたシステムは今や各地で動き出しており、未来への夢と可能性は実際に広がり始めています。夢と可能性を形に。私たち民進党は既に省エネ・再エネを加速化するための関連法案を国会に提出しています。実現したい未来を国民に伝えていきたいと考えています。
私たちは、いつも今を見詰め、新たな可能性を実現する政策集団です。2012年に作成した「革新的エネルギー・環境戦略」から4年が経過しました。この間の再エネ・省エネの進捗ぐあいをリアルに見詰め、党内で何ができるかを精力的に議論・検討し、我々は「原発ゼロ基本法案」を国会に提出することを確認しました。
新しい技術、国民の努力、このことによってグリーンエネルギー革命は相当加速化されてきました。この加速に伴い、原発依存からの脱却が前倒しで実現可能となるよう、来る総選挙に向けて「原発ゼロ基本法案」を作成してまいります。再稼働まっしぐら、原発依存へ逆戻りの現政権とは違う未来を、私たち民進党は描いていこうではありませんか。
もちろん、エネルギーは国家の重要基本政策です。国民生活、経済活動に与える影響、国際的なエネルギー情勢や国際社会との関係、使用済み核燃料の処理、それに関する自治体の理解と協力の状況なども真剣に検討していきます。
東日本大震災から6年となりました。ことし3月31日に避難指示が解除される飯舘村の村長が言われた言葉が頭から離れません。「普通の災害であれば、ゼロからのスタートです。でも、我々はゼロへのスタートです」。この重い言葉に応える責任を、3.11を忘れずに、私たち民進党がしっかり果たすと、ぜひ言わせてください。
省エネルギー・自然エネルギーが持つ夢と可能性を現実のものとするために、1日も早く「原発ゼロ」目標を実現するための「原発ゼロ基本法案」を国会に提出してまいります。
◆教育の無償化
もう一つ。私たちは政権時代に高校の実質無償化を実現し、その第一歩を踏み出し始めましたが、最近さまざまな教育無償化をめぐる議論が起きていて、一部には、そのために憲法を改正しようとする主張もあります。しかし、教育無償化を実現するための最大の課題は財源であることは明らかであり、憲法改正が必要だとの主張はこれをごまかすものだと思います。
私たちはこの問題にも正面から取り組んでいきたいと思います。子どもたちに奨学金という名前の借金を負わせ、返済負担が重く、結婚さえできない未来を「自己責任」と言い放つのではなくて、支える。
子どもたちが納税者として社会を担う一員となるために必要な財源は、最大で5兆円程度です。その第一歩として、これも党内の活発な議論を経て、消費税を8%から10%に引き上げる際、その1%に当たる3兆円弱を活用することに加え、所得税・住民税の配偶者控除廃止、相続税・贈与税の引き上げなどにより、十分な財源を確保したいと考えています。これを前提に、教育無償化に向けた具体的な工程を法律案という姿で皆さんにお示ししたいと思います。
(NPO法人キッズドアの)渡辺理事長が言われました「きょうのお昼は100円」「大学生に会ったことがない」。次の世代にこんなせつない選択肢を残す未来は、政治ではありません。私たちは次の世代に教育無償化を通じて可能性を残す政治を確かに実現していきたいと、あらためて宣言をさせてください。
◆社会保障制度・税制改革
また、人口減少社会における持続可能な社会保障制度はどうあるべきか。日本版ベーシックインカムの税制とあわせ、今これも党内で議論を進めています。
教育とエネルギー、社会保障制度と税制改革。次世代へ可能性を残す政策はどうあるべきか。私たちはいつも今を見詰め、新たな可能性を実現する政策集団だということを、この1年間、仲間の皆さん、日本各地で堂々と声を高らかに訴えていただきたいとあらためてお願いをいたします。
◆「働き方改革」・男女共同参画社会の実現
「働き方改革」、先ほど神津会長からありました。全く同じ思いです。残念ながら、この前向きな響きとは裏腹に、政府は長時間労働を助長するような法案を出しています。
政府とは違い我々は、働く人々が自らを必要とされていることが実感できる環境、ワーク・ライフ・バランスを整える政策実現を目指しています。中でも男女が置かれた労働環境格差の是正を進めたい。
先ほどバリントン閣下が言われました、世界経済フォーラムが公表したジェンダーギャップ指数、調査対象145ヵ国のうちアイルランドは6位。うらやましい限りです。日本は過去最低で、111位です。「輝く女性」が聞いてあきれる、残念過ぎる現実です。
その背景には就職、結婚、出産など、人生のさまざまな場面で女性が一方的に何かを諦めることが求められる慣習があります。常に女性が選択のリスクを負う慣習もあります。この根強い慣習を一掃する新たな仕組みをつくらない限り、真の男女共同参画社会は成し遂げることができません。
男女平等の働き方を実現するために、法律で適正な残業時間の上限を定めることによる長時間労働の解消、育休手当100%支給による男性の子育て参加の促進、選択的夫婦別姓の実現に取り組みます。
あわせて、政界で活躍する女性を増やし、世の中の仕組みを女性視点からつくることも重要です。政治における男女共同参画を進めるため、国政選挙において男女クオータ制の導入を可能とする公選法改正の実現に全力を挙げていきます。
関連して申し上げます。各級選挙における候補者の男女均等を目標とする「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律案」の成立が見通せることになったことを踏まえ、民進党として選挙対策委員会及び男女共同参画推進本部には、女性候補者の発掘をあらためて強くお願い申し上げます。推進本部役員は2年後の統一自治体選挙で女性候補者倍増を目指してください。それと同時に、国政選挙においても積極的に女性候補者を発掘してください。今言った委員に入っていないからいいということではなく、全ての国会議員にその努力をお願いいたします。それが私たちの目指す社会をつくる原動力になるということもつけ加えさせてください。
◆次期総選挙・東京都議会議員選挙
次期総選挙に向けては、二大政党の一翼を目指す民進党として、過半数の候補者擁立も絶対条件です。既に各都道府県連においてご努力をいただいていますが、さらなるご努力をお願いいたします。
来る総選挙は、我が党にとってまさに正念場であり、極めて厳しい、強い危機感を持って臨みたいと思います。
私は、政治家になると決めた時、迷わず当時の民主党を選びました。国民の選択肢になりたいと思いました。選べる政党をつくりたいと思いました。民主党の先輩・仲間に育ててもらって、今は民進党の仲間と、新たな後輩・先輩に支えてもらっています。民進党は、私の政治人生においての全てです。だからこそ私は、今の仲間の皆さんとともに、何としてでも二大政党の実現を目指したいと思っております。
先ほど井手先生が、「このようなみすぼらしい社会を子どもたちに残せない」と言いました。全く同じ思いです。私の政治人生全てをかけて、この民進党で「共生社会」を、分け与えることができる社会を、しっかりと政権交代で実現していきたいと、あらためて皆さんと思いを共有させてください。
まずは東京都議会議員選挙です。都議選は地方選挙ではありますが、国政選挙に影響のある選挙です。都議選の勝利、国政選挙の勝利が、結果として各地の選挙の勝利につながります。東京以外の皆さんには大変申しわけありませんが、全国各地からの支援を要請いたします。7月2日の都議選に向けて、まさにきょうこの瞬間から、党全体で活動を始めたいと思います。重ねてで恐縮ではありますが、皆様のご協力を心よりお願いを申し上げます。
◆終わりに
「一人で見る夢は夢でしかない。しかし、誰かと見る夢は現実だ」、オノ・ヨーコさんの言葉です。私は、民進党の皆さんと一緒に見ている夢を確かな現実なものに変えていきたいと、強くこの場でお訴えをさせていただきます。
教育無償化で子どもたちに未来を、「原発ゼロ」社会で新しいエネルギーの未来を、社会保障制度改革をつくることによって日本の未来を、つくっていくのは民進党だということをあらためてお訴え申し上げ、何が何でも二大政党、その実現に向けて全力をかけていきたい。そのためにこれからの1年間、来るべき総選挙に向けても、ここにお集まりいただいた皆様方の力をしっかりいただいて、党一丸となって、私たちの未来を現実、実現可能なものに変えていきたいとあらためてお願いを申し上げ、私からのあいさつにかえさせていただきます。
本日はありがとうございました。