相模原市の障害者支援施設で2016年7月、46人が殺傷される痛ましい事件が起きた。犯行と精神障害との関係はこれから裁判で争われることになっているにもかかわらず、安倍政権は「犯人=措置入院(※)が必要な精神障害者」と決めつけて、精神障害者の措置入院の仕組みを強化する法案(精神保健福祉法改正案)を提出した(写真は法案資料修正について説明を聞く18日の厚生労働部門会議の様子)。
安倍総理も今年1月の施政方針演説で、「昨年7月、障害者施設で何の罪もない多くの方々の命が奪われました。決してあってはならない事件であり、断じて許せません。精神保健福祉法を改正し、措置入院患者に対して退院後も支援を継続する仕組みを設けるなど、再発防止対策をしっかりと講じてまいります」と述べている。
法案は、原則として措置入院中に措置入院者の退院後支援計画を作成することとしており、計画ができるまで退院できず、精神科病院への囲い込みにつながるおそれがあるという問題がある。一方的な決めつけで、精神障害者の人権を侵害するおそれのある法改正を行うことは問題であり、民進党は4月11日の「次の内閣」で反対することを決定した。
民進党が参院厚生労働委員会で厚労省にこの問題をただしたところ、厚労省は13日、「改正の趣旨を法案の内容に即したものにすることで、より分かりやすくするため」といった理由で、法案の概要資料から事件に関する記述を削除することを含め、5カ所の修正を提示した(PDFダウンロード参照)。審議が始まってから法案の資料を修正することは極めて異例。
大串博志政務調査会長は18日の記者会見で「総理が国会で言ったことすら取り消してもらわなければならない」と事態の深刻さを語った。同日の厚生労働部門会議では、厚労省から修正の経緯や内容についてヒアリングを行った。会議冒頭、足立信也ネクスト厚生労働大臣は「われわれとしてはゼロからやり直し、法案の趣旨説明からやり直すことになっている」と異例の事態になっていることを説明。出席議員からは「看板を変えるなら中身はだめだということ」といった批判が相次いだ。
民進党は引き続き、根幹に関わる部分が修正された本法案の問題点と政府の対応を厳しく追及していく。
※入院させなければ自傷他害のおそれのある精神障害者を、精神保健指定医2人の診断の結果が一致した場合に都道府県知事が決定して入院させること。